一般的に、会社が大きくなると経営理念の浸透が難しくなると言われています。
そうならないために、企業は様々な手法で経営理念の浸透を図ります。
例えば、毎朝の朝礼で社是を唱和したり、社員手帳に経営理念を記載したり、等々。
経営理念とは、「何のために経営しているのか」という”経営の最高方針”を示したものです。
経営理念で有名な企業は色々ありますが、代表的なものを以下に記載します。
(※企業によっては経営理念という言葉を使っていない企業もあります。)
■京セラ(経営理念)
全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること。
■ワタミ(経営理念)
変化する社会に応じて「ありがとう」を創造していきます。
ワタミグループは、少しでも人や地球環境に良い影響を与えるグループを目指し、活動を行っています。
■ファーストリテイリング(ステートメント)
服を変え、常識を変え、世界を変えていく
■セブンイレブンジャパン(創業の理念)
既存中小小売店の近代化と活性化
共存共栄
■日本マクドナルドホールディングス(基本方針)
ハンバーガービジネスで培った資産を有効活用し、経営の効率化と機動性の強化を通して
企業価値の向上を図ることにより、長期的かつ安定的なグループ企業の成長を図りたいと考えております。
■グリー(コーポレートメッセージ)
インターネットを通じて、世界をより良くする
■ナムコ(企業理念)
遊びを通じて、お客様を幸せにします。
■ヤクルト(企業理念)
私たちは、生命科学追求を基盤として、世界の人々の健康で楽しい生活づくりに貢献します。
■味の素(企業理念)
「味ひとすじ」
■アートネイチャー(経営理念)
毛髪コンサルタントを使命とし、お客様に満足頂ける毛髪文化を創造します。
こやって見ると、なかなか興味深い文言が並んでいますが、
経営理念が抽象的すぎて何が言いたいのか分からない会社もあります。
様々な企業で経営の根幹となる考えを明文化しているわけですが、
新入社員は別として、これらの理念を記憶している社員は少ないと思われます。
また、記憶することに意味はなく潜在意識のレベルで体得することが重要なのが理念です。
日常業務の中で無意識に判断できるレベルに落とし込むことは至難の業といえます。
実際、上記の企業の中でも、立派な理念があるにも関わらず、
世間的にはブラック企業と呼ばれている企業もあります。
また、ブラック企業ほど立派な理念があるという説もあります。
なぜなら、ワンマン経営者が社員を独自の理念で洗脳支配するケースが多いからです。
こういう経営手法は理念経営と呼ばれていますが、
理念への傾倒が過ぎる社員は洗脳されてしまい、違法がまかり通る会社になります。
理念経営はTOPの判断が正しければ非常に効率的な経営手法になりますが、
逆の場合はブラック企業一直線です。
その会社がブラックなのか、それとも理念経営の会社なのかは紙一重です。
要するに、この経営手法は「諸刃の剣」なのです。
今回なぜこの題材を取り上げたかというと、
同業他社で経営理念の浸透に問題があると感じた会社があったからです。
その会社からは、複数年に渡り弊社の会員制サイトへ不正アクセスをされていました。
弊社のWEBサイトは医師限定なので、非医師が医師に成り済ましていたことになります。
また、WEBサイトへのアクセスだけでは飽き足らず、弊社のエージェントと電話で話し、
求人を探すように依頼した不届き者もいました。
その後、不正は留まることを知らず、自分の知人医師の求人まで探すよう依頼してきました。
最終的に、その成り済まし医師とは連絡が付かなくなったのですが、
怪しく思った別の従業員が調査した結果、同様の手口で不正アクセスが多数あったことが分かりました。
(WEB上で悪さをすると何らかの痕跡が残ります。)
そして、外部調査機関を使い、不正を働いた企業を特定しました。
あまりにも悪質なケースだったので、訴訟を起こすことも検討したのですが、
相手は業界TOP企業であり、一部上場企業の子会社なので、正面から抗議すれば分かってもらえると思い、
まずはアクセス元の事業所に連絡し、担当者に電話口に出てもらいました。
(弊社の外部調査機関の調査能力は素晴らしく不正を働いた個人を特定できます。)
ところが、この担当者は「知らぬ存ぜぬ」の一点張りです。
そのため、上司に代わってもらったのですが、このポンコツ上司も事の重大さが全く理解できないようで、
早々に正面から抗議することを諦めました。
次に取った行動は、一部上場企業である親会社の法務部門に抗議することです。
親会社の代表に電話したところ、電話口に出たのは経営企画部門の女性でした。
この方は非常に頭の回転が早く、早急に社内調査して結果報告することを約束してくれました。
(さすが一部上場企業の経営企画部門です。)
翌日、不正を働いた同業他社の副社長を名乗る人物から電話がありました。
電話口の対応は決して褒められたものではなく、明らかに嫌々連絡してきた感じです。
先方の話した内容は以下の3点。
「会社が指示してやらせたことではない。」
「その不正によって得た利益はない。」
「二度とこのようなことが起こらないよう、周知徹底する。」
その間、謝罪らしき言葉はあったものの、嫌々言わされている様子でした。
200名もの会社の副社長がこの有様では、従業員も大したこと無いと思わざるを得ませんでした。
企業はTOPから腐って行くと感じた瞬間です。
こちらとしては、誠心誠意対応してくれたらそれでいいと思っていたのですが、
このような謝り方では次もあると思ったため、書面による提出or対面での説明を求めました。
ところが、後日その副社長から連絡があり、どちらもするつもりが無いと言われました。
その言い方も非常に腹立たしく、以下の内容でした。
「今回のことは従業員が勝手にやったことだから会社は今後関知しない。」
「文句があるなら従業員に直接言ってくれ。」
「会社に何か言ってくるなら顧問弁護士を通してくれ。」
おいおい。
お前は何様なんだ?
従業員が業務上で罪を犯したら会社の責任でしょ?
従業員が業務に関連して犯罪行為を行っていたのであれば、会社は使用者責任を負います。
従業員が売上を横領していることがバレたら、会社が追徴課税を払わなければなりません。
従業員がカルテルで摘発されたら、会社が罰金を支払います。
こんな常識が通用しない会社ってヤバイですよ。
こうなったら、徹底的に争ってやろうか・・・・
とも考えたのですが、元々争いごとが嫌いなわたしは別のやり方を考えました。
それは、常識的な対応をしていただけた親会社の方にもう一度連絡することです。
わたしは、紳士的な文面で顛末をお伝えし、親会社の方に個人的なご意見をお聞きしました。
すると、メール送信後すぐに電話がかかってきました。
そして今からお会いしたいとのこと。(素早い対応です)
弊社にご足労いただき、名刺交換をしたところ「経営企画部長」の肩書きでした。
どおりで、対応がスマートなはずです。
子会社のポンコツ副社長とはえらい違いです。
(おそらく子会社の社長もポンコツだと思われます。)
その方とは小一時間話をしましたが、それにより怒りは収まりました。
詳しい事は書けませんが、今回不正をした子会社の運営には問題意識をもっているようでした。
要するに、その子会社においては創業者の理念が薄まりつつあるとのこと。
逆に、その子会社以外のグループ企業はそれなりに理念が浸透しているとのことでした。
理念を浸透させるために、スポーツ応援や社員旅行もしているようですが、
拠点が離れてしまうと、どうしても社員間の溝ができてしまうようです。
やはり、日々の業務を一緒の場所で行うことが、理念の浸透には最も効果があると思います。
そういう意味では、拠点を増やすことはリスクを拡げることになると思います。
「理念の浸透」なんて難しい言葉で語っていますが、
結局は「価値観の共有」なのです。
一緒にいる時間が長ければ、価値観は自然と共有できます。
今回勉強になったことは、美しい創業理念の浸透は規模が大きくなると難しいということ。
また、汚いTOPの考え方は意識しなくてもすぐに末端社員まで拡がっていくこと。
今回の件で、親身に対応していただいた親会社のご担当者に対しては敬意を払いますが、
不正を働いた同業他社に対しては徹底的に戦うことを宣言します。
ただし、正々堂々とルールを守って戦います。
しかし業界TOPの会社がこのレベルでは先が思いやられます・・・・苦笑