「企業は税金を払って社会貢献するのが一番の使命だ。」
トヨタ自動車の豊田章男社長が先日の決算発表会で仰った一言です。
そんなトヨタ自動車ですが、リーマンショックの2009年以降、法人税を一切払っていませんでした。
税金を払っていなかった最大の理由は、2009年に出した約4400億円の赤字です。
この赤字を翌年以降に繰り越すことで、2010年以降の3年間、税金を払ってこなかったのです。
(※厳密にはそれ以外の優遇税制も利用しています)
日本の法人税のルールにおいて「繰越欠損金」というものがあります。
このルールは、企業が損失を出したら最大で9年間繰越できるというものです。
損失を出した翌年以降に利益を出しても、その8割は過去の損失と相殺できるのです。
具体的な例を示すと、4400億円の損失を出した翌年に2000億円の利益を出しても、
その8割にあたる1600億円には課税されないということです。
(そして残りの2800億円の損失は更に翌年以降に繰りされます。)
この制度は創業時に大きな投資をした企業にとって非常に有り難い制度です。
ベンチャー企業が初期投資を回収するまでは、課税を待ってくれるという優しい側面があります。
この欠損金の繰越制度は多くの国で採用されており、ドイツやイギリスでは繰越の期限がありません。
しかし、この制度を悪用すべく恣意的に赤字にして法人税の負担を回避する法人も存在しています。
事実、この制度を利用している法人は国内企業の約7割だそうです。
この制度は大企業にとっても非常に使い勝手の良い税制なのですが、
公平な競争という観点から非常に問題のある制度ともいえます。
例を挙げると、2012年に三井住友銀行が15年ぶりに、りそなは18年ぶりに法人税を納付しました。
(三菱UFJフィナンシャルは2011年、三井住友信託は2007年から納税を再開)
日本を代表するメガバンクが、法人税を10年以上も納付していなかったということですが、
メガバンクの納税開始は、1990年代のバブル処理が終了したことを意味します。
しかし、バブル期に一番良い思いをしたのは他でもない銀行ですし、
その尻拭いを税金でするというのはおかしな話です。
また、税金で救済されたJALも推定4000億円の繰越欠損金がありました。
そのため、2012年3月に税引き前利益を1866億円も稼ぎながら、法人税をほとんど納めていません。
これに対してライバルのANAは下記のような声明を出しています。
「企業努力で正常な経営を保ってきた会社より、つぶれて身軽になった会社が儲かり、
税金まで免除されるのでは、対等な競争にならない」(ANA企画部)。
よく日経新聞の紙面上で「V字回復!!」なんて文字が躍っていますが、
これは恣意的な赤字を一気に計上して、その後の数年間は法人税を払わずに
黒字を確保するという経理上の常套手段が背景としてあるのです。
しかも、そのようなやり方を10年単位で繰り返している大企業は少なくありません。
それって、経営失敗の責任を「法人税の不払い」という形で
国民に背負わしているといっても過言ではありません。
ルールだから利用しないと勿体無いという気持ちは分かるのですが、
冒頭の言葉にもあるように、企業は税金を納めることで社会貢献しているのです。
節税対策で本社を海外に移転する企業もあるようですが、
日本人なら日本で納税して日本国に貢献すべきだと思います。
(ふるさと納税みたいなもんですね)
また、毎年国内企業の7割前後が法人税を納めていませんが、
裏を返せば法人税を納めている企業は非常に優秀な企業ということになります。
であれば、法人税を3年連続で納めた企業は税率を低くするとか、
ゴールド免許的な特典をつけてもらいたいくらいです。
さらに、赤字企業(創業間もない企業は除く)からも税金を徴収して、
市場から撤退してもらうという選択肢があっても良いと思います。
(資本金・売上・従業員数などをベースとして課税する外形標準課税みたいなやつ)
いまの税制は歪んでおり、明らかに普通に黒字を計上している法人が割を食っています。
とまあ、いろいろ書きましたが、
結論は「税制を公平にして欲しい」ということです。
正直者が損をして、ズルい人が得をする社会は望ましくないですから。。。