投資していることを忘れる

金に投資するには、いくつか方法があります。
地金で買う、金貨を買う、純金積立を利用する、というあたりまでが誰にでもイメージしやすいところでしょう。
金投資をより広く捉えるなら、その他にも、
金ETFや金先物への投資、はたまた金鉱山の株を買う、といった方法もあります。
でも金投資のメリットを最大限に活かすということで考えると、地金か金貨、
せいぜい純金積立あたりまでではないかなと僕は考えます。
それ以上となると、他の金融商品の要素がかなり入ってきてしまうからです。
金投資のメリット・デメリットはいろんなところで言われていますが、僕なりにまとめてみました。
これらの特性を踏まえて、金投資は”究極の保険”、”ラスト・リゾート”(頼みの綱、最終手段)などとも言われます。
一般的には保有資産の10%程度を金で持っておくのがと良いとされていますが、
これは本当に、あくまでも余裕資金として置いておいて、
“増やすため”というより、”減らさないため”の資金。
気持の上では、値上がり期待さえも、しないほうがいいのではないでしょうか?
僕も少しばかり金貨を買ってみたことがあるのですが、現物を持っていると、どうしても
“そこにある”という意識が強くなってしまいます。
これは人によるのかもしれませんが、僕の場合はその意識が強くなりすぎて、
たとえば金価格が毎日気になってしょうがなくなってしまったり、
手元のお金が不足したときにすぐに頼ってしまったり…(僕は結局そうなってしまったのですが…)。
これでは意味がないですね。
他のすべての長期投資にも通じることですが、資産運用にはこのメンタルコントロールが大切です。
はっきり言って、僕にはちょっと難しいです。ハイ。
金投資はつまるところ、運用するというよりも、何かあった時のための保険というくらいの意識のほうがいいのでしょう。
自分が金に投資しているという事実を忘れるくらいでもいいかも知れません。
金投資の場合、忘れていたからと言って、とくに致命的な損害を被ることにはなりませんから。
(市場リスクがある以上、元本割れするリスクはありますがゼロになるようなことはないという意味です)
資産運用では基本的に、自分がどこにいくら投資しているかをなるべく正確に把握して管理しておく必要がありますが、
こと金投資に関しては、むしろそれをしないほうが良いのではないかという気すらします。
忘れていた頃に、あ、ここにもあったんだと気づく。その喜びですね。
たとえば、衣替えで出してきた冬物のコートのポケットの中から、不意に一万円札が出てきたような感じでしょうか。
僕はこの感触を味わいたくて、春にコートをしまう時に、
なるべく記憶にとどめないようにと気をつけながらポケットの中に一万円札をしまっておいたことがあるのですが、
なかなかうまくいかないものです。そういうふうにやると、ちゃんと記憶に残ってしまうんですね。
友だちの結婚式か何かで急に手持ちのお金が足りなくなったときに、あそこにあるはずだという確信があったので、
真夏の夜に、押し入れのいちばん奥にしまってある冬物のコートを汗だくになって引っ張り出して、、、
これじゃやっぱりダメですね…。

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また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。 

消去法

今回の円高は、消去法が理由だそうです。
ドルもだめ、ユーロもだめ。それで、仕方なく買われているのがスイスフランと円。
ごく大ざっぱにみると、いまの世界の通貨の構図はこんな感じなのだと思います。
日本が安定しているから円が買われていると言われても、なんだかあまり実感が湧きませんが、
裏を返せば、それだけ今、世界の情勢は不安定なのだということでしょう。
日本円とともに消去法で買われているというスイスフランも、
スイスの中央銀行であるスイス国立銀行(SNB)副総裁が11日、
極端なスイスフラン高を抑制する発言をしたことを受けて、急落を見せています。
ここ数日のチャートを見比べると、左が米ドル/スイスフランで、右がユーロ/スイスフランで、
下がスイスフラン/円。
対円も含めて、一気に急落しているのがわかります。
時計などで知られるように、スイスも日本と同じように工業製品の輸出が重要な位置を占めている国ですので
円高になりすぎると日本が困るのと同じような事情がスイスにもあるのはわかる気がしますね。
消去法で買われている国どうし、スイスと日本は我慢比べという様相を呈しています。
でも消去法で競い合うというのも、あまり気持ちのいいものではないですね。
あなたを選んだのは消去法だったの、とは、言われないようにしたいものです。
まあそれはいいとして…
 消去法の欠点は様々な選択肢の中に正しい答えがあることを前提とする物で、
 仮に選択肢が全て間違いであった場合には、正解を導き出すことは不可能である。
                                                                             (by wikipedia)
そう、消去法を突き詰めると、通貨はどれも全部ダメということだってあり得るわけで、
通貨が全部ダメならば、通貨に代わるものを考えた方がよさそうですね。
たとえば金(ゴールド)とか。
実際、いま金の価格がかつてないほど急騰しているんです。
これは1978年から現在に至るまでの金価格の推移です。
最近の円高のせいで、赤線の国内金価格は青線の海外金価格ほど上昇していないとはいえ、
金が30年に1度という高値をつけていることは確かです。
通貨がダメなら金があるさ、ということですね。
昔から”有事の金”という言われ方をしてきました。
1979年から80年にかけての急騰は、イラン革命による第二次石油危機、そしてソ連のアフガン侵攻によるものでした。
いまはそれ以来の高値が続いているんです。それ以来の有事ということでしょうか。
それで、金価格はこのまま、さらなる高みへと上り詰めるのでしょうか?
ここまでくると、消去法ではわかりません…。
でもなんだかこの国の代表も、消去法で決まることになりそうな感じになってきましたが、
いったいどうなるのでしょう?
ここでもう一度…。
 消去法の欠点は様々な選択肢の中に正しい答えがあることを前提とする物で、
 仮に選択肢が全て間違いであった場合には、正解を導き出すことは不可能である。
                                                                             (by wikipedia)


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情報源は複数から、リーズナブルに

先週は重大な経済ニュースが目白押しでした。
為替は月曜日にNY市場で1ドル76円台前半の超円高に突入。
東京市場でも初の76円台をつけたのが水曜日のことで、
木曜日にはついに日銀の円売り介入が行われて、ドルは一時、80円台まで戻します。
そしてその日の早朝ですが、
日経新聞が報じた日立と三菱重工の経営統合のスクープには驚かされました。
週末には日経平均株価は震災直後以来となる9300円割れ。
世界同時株安の様相を呈する中、格付け会社のS&Pがアメリカ国債を格下げしたと伝えられたのが、
日本時間で土曜日の朝のことです。
震災関連や国内政治のゴタゴタやらで、ずっと経済関係のニュースはナリを潜めていた感じでしたが、
ここにきて、経済がアツいですね。
しかも、どれも現在進行形な話です。週明け、日経平均はついに9100円割れからの出発ですし、
他のそれぞれの話題についても次の展開がありますから、
当面の間、何かよほど大事件が起きない限りは、ニュースは経済ネタが中心になりそうな気がします。
中でも面白かったのは日立と三菱重工の経営統合の話でした。
実現すれば世界最大規模の総合インフラ企業が誕生ということで、日経新聞はスクープを狙ってきたんです。
東京最終版まで記事の公開を温存していたらしいですね。日経電子版にアップされたのも朝の3時でした。
実際、4日朝はテレビやネットのメディアまでが、日経新聞の記事を追いかける形でこの話題を報じていましたし、
他紙の紙面に載ったのはその日の夕刊になってからというわけです。スクープ大成功、といったところでしょうか。
だから、僕が住んでいる鎌倉で入手したこの日の日経新聞には、日立・三菱重工の記事は載っていません。
都心部の皆さんが持っている上の写真とはまるで違う内容ですね?
つまり地方都市に出回ったこの紙面は、いわば”捨て駒”のようなものですが、
真ん中やや下には、「日経電子版、100万人突破」という、
何やらPRのような記事がちゃっかり載っています。
読めば、「日本経済新聞 電子版」の登録会員数が100万人を突破したとのこと。
「電子版なら、記事の地域的な格差はなくなります」とはさすがに書いてありませんが(笑)
国内報道サイトの登録者数としては初めてのことだと自慢げです。
新聞社としては、記事の独自性を打ち出すのと読者の取り込みに躍起なんですね。
このことを知り合いの金融関係者に話したら、彼は仕事場ですべての新聞の最新記事が利用できるので、
個人として日経新聞はとっていないとのことでした。
なるほど、金融マンは早起きして日経新聞を隅から隅まで目を通すというイメージは、もう過去のものなんですね。
それでも、考えてみると日経新聞本紙の発行部数が300万部を超えるのに対して、電子版はやっと100万人。
しかも無料会員まで含めてこの数字ということですから、もともと日経新聞を購読していなかった人もこの中に入るわけです。
ということは、どんなに少なく見ても200万人以上の人が、いまだに紙媒体のみで日経新聞を利用しているということになりますよね。
僕にとってはこちらのほうが、ちょっとした驚きでした。
「日経新聞のあそこに記事が載っていましたよねー」と言われて、
「読みました!それで私はこう思ったんですよー」と返せればけっこう嬉しくて、
「えっ、読んでない(汗)」となるのはちょっとイヤだなー、
といったやりとりを日常的に行っている人たちが、まだそれだけいるということです。
根強い”日経信仰”、恐るべし日経新聞。
結局、”日経を読む”ということの意味はそこにあって、
同じ情報でも、一般紙やテレビからではなくて”日経で読んだ”ことが重要で、
その話のとっかかりを共有したうえで、ビジネスに必要なコミュニケーションに入っていく。
電子化が進む一方で、そうした雰囲気が残る限りは、新聞社もスクープにこだわっていくのでしょう。
ただ今回の日立・三菱重工の一件に関しては、ちょっとフライングすぎて
実際の両社の交渉に水を差したという見方も少なくないようです。
ちょっと前のサントリーとキリンのように、破談になったりしなければいいのですが…。
スクープから取り残されたから言うわけじゃないですけど、
僕らとしては、一つの媒体にこだわることなく、
複数の情報源からリーズナブルに情報を入手すればそれでいいのではないかと思います…。

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潔さ

ジョージ・ソロス氏が引退を表明したニュースが先週、世界中を駆け抜けました。
ソロス氏については以前、報酬額が世界2位のファンドマネージャーいうことで触れましたが
報酬額もさることながら、”国家に勝った投資家”(産経新聞)”投機の帝王”(東京新聞)といった
今回の記事で使われていた派手な異名のほうが、氏の存在感をよく表しています。
1992年のポンド危機では、必死でポンドを買い支えるイングランド銀行(イギリスの中央銀行)を相手に
ソロス氏は激しいポンド売りを行って勝利を収め、10億~20億ドル稼いだといわれています。
イギリスがユーロに加われないのは、実はこの時の敗北がいまだに尾を引いているからなんですね。
また、1997年には大量のタイバーツ売りを仕掛けてアジア通貨危機の口火を切り、
タイをIMFからの金融支援を受けざるを得ない状況へと追いやったのもソロス氏でした。
まさに、国家をも打ち負かす男。
そして自身の運営するファンドでは、ヘッジファンドという言葉すらなかった1960年代の終わりからずっと、
平均で年20%という驚異的なリターンを上げ続けてきたということです。
以前紹介した盟友のジム・ロジャーズ氏が”冒険投資家”としてタレント的な活躍をする一方で、
ソロス氏は独特の世界観や思想を書物で展開したり難解な相場理論を打ち立てたりと、一貫して硬派なイメージ。
実際、オックスフォード、イェールといった一流大学から名誉博士号を受けるといったアカデミックな顔も持っています。
それから、東欧やアフリカの民主化やエイズ対策などに強い関心を示して、
過去30年間でなんと総額80億ドルを超える寄付をしてきたというのですから、
慈善家としてもやることがケタ違いですね。
そのソロス氏は、引き際もあっさりとしています。
80歳という高齢も、もちろん理由のひとつでしょうけど、
表向きは米国で行われる金融規制改革が理由とのこと。
ある程度の資産規模をもつヘッジファンドが、顧客から預かった資金の運用を行う場合、
今後は米証券取引委員会(SEC)への登録が義務付けられ、取引の詳細な情報開示が求められるようになるということで、
そうした規制に縛られては思ったような運用ができなくなるとの判断なのでしょう。
ソロス氏の引退は金融界に大きな波紋を呼んでいて、
いまの金融市場があまりにも危険であるというメッセージだと受け止める人も多いように思います。
確かに、そのメッセージを発するために引き際のタイミングを探していたということなのかもしれません。
いずれにしても、とにかく壮大なる勝ち逃げであることは間違いないです。
この潔さ。やはり大物は違いますね。
僕は元ソフトバンク監督の王貞治氏が現役を引退したときの台詞を思い出しました。
「王貞治のバッティングができなくなった」
長嶋”ミスター”茂雄氏の名言「わが巨人軍は永久に不滅」があまりにも有名なので知る人ぞ知るという感じかもしれません。
でもこの去り際の美しさ、さすが”世界の王”じゃないでしょうか?
名を捨てて実を取るという言い方がありますが、
こういう、世界に名を残す人たちは、キレイに辞めることで名も捨てずに実を取る、
そのやり方を心得ています。
なんだか辞めるとか辞めないとか言ってるうちに、
名も捨てて実も取れないようなことになると、その先の展開は苦しくなりますね…。
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予測しない

今回の円高では、ヒドい目に遭いました…。
7月8日の米雇用統計発表で80.6円までドルが下がったところまでは想定の範囲内でしたが
その後の雪崩を打ったようなドル安は、まったく予想がつきませんでした。
今月初めまでは多くのエコノミストが、円安を予測していたんです。
「日経ヴェリタス」に週替わりで掲載されている為替予測を振り返っても、
78円台のしかも前半にまで円高になると予測していた人は、この1か月間では誰もいませんでした。
 6/19付 第一生命経済研究所 熊野英生氏 「向こう1カ月、1ドル=79~82円で推移しそう」
 6/26付 みずほ証券投資情報部為替アナリスト 鈴木健吾氏 「今後3カ月、1ドル=79~84円で推移しそう」
 7/3付 明治安田生命保険運用企画部チーフエコノミスト 小玉祐一氏 「向こう1~2カ月は強含みで推移するだろう」
 7/10付 SMBC日興証券国際市場分析部市場分析課長 松本圭史氏「今後3カ月、1ドル=80~85円で推移しそうだ」
チャートから感じる「気分」のようなものも、円安の予測を後押ししていたような気がします。
次の図は7月8日までのドル円のチャートですが、これを見る限りだと、
震災の超円高があり、その反動で一度戻した後にまたドルは底値近くをしばらく低迷し、
そしてようやく大底を打って、これからゆっくり立ち上がっていく…。
今見ても、なんだかこれからドルが上向いてくるように見えてしまう雰囲気があります。
もちろんエコノミストの予測は、僕みたいになんとなくそう思ったというものではなくて、
専門家として入手したいろんな情報や数字を分析した上で、プロとして予測しているわけです。
それでも当たらないのが、為替の予測。
週明けの7月11日以降を加えたのが下の図です。まさに梯子を外されたような急降下。
こんな円高を、いったい誰が予測できたでしょう?
FXで行うトレードのやり方は大きく4種類に分けることができて、
決済まで数カ月間にわたってポジションを持っているのがキャリートレード、
数日間で決済するのがスイングトレード、1日のうちで決済するのがデイトレード、
数秒から数分で決済するのがスキャルピングと言われています。
その中でもキャリートレード、スイングトレード、デイトレードは、
ふつう多かれ少なかれ予測をしてトレードに当たるのですが、
それに対してスキャルピングに特化して稼いでいるトレーダーの中には、
「予測しない」ことを極意にしている人もいます。
予測しないのにどうやって利益を出すのかというと、
スキャルピングとはそもそも「頭皮」を意味する”スキャルプ”から来ていて、
薄い皮を剥がす感覚で、ほんのわずかでも利益が出たらすぐに決済するという手法です。
僕は使わないのですが育毛剤には「スキャルプケア」なんて書いてあったりします。その”スキャルプ”です。
つまりトレードしている間は常に為替ボードの前に張り付いていて、
予測するのではなくて、刻々と変わる現実の相場をずうっと眼で追いながら、
すこしでも利益が出た瞬間、一瞬のタイミングを見逃さずに売買をする。
これは、反射神経とテクニックの勝負です。
そのためにはたとえばPCのメモリを増やすのはもちろん、キーボードの配列を自分流にカスタマイズしたり、
エントリー(新規注文)からイグジット(決済)までをいかに素早く行えるか、
1日30回×3セットとかメニューを決めて反復練習をしたりするのです。体育会系ですね。
さらに、2台のPCのマウスを両手で同時に操作すれば、
1回の利益はわずかでもトレード回数を2倍にすることで利益も2倍になる…。
こうした地道な工夫やトレーニングを積み重ねることによって、1日に100回、200回とトレードを行い、
“予測すること”のリスクを極力抑えることができるというわけです。
なるほど、たしかに予測しないで利益を出せそうな気もしてきますが、なかなか大変そうですね。
というか、かなりスリリングで体力勝負なゲームになりそうです。
時間と資金に余裕があり、しかも体育会系の気合と根性と体力の持ち主限定、という感じでしょうか…。

※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。