軌道

以前ここで紹介したM君と、先日久しぶりに会って来ました。
彼は僕の学生時代からの友人で、ことしから保険会社で仕事を始めたということで
数年ぶりに会ったのがこの1月のことでした。
外資系保険会社でのコンサルタントというのは、フルコミッションで収入が決まる世界。
一見すると会社員のようにも見えますが、税法上は個人事業主なので
店舗こそないものの、お店をひとりで開業したのと同じようなものです。
その手の社員募集の際には、極端な成功例を引き合いにしているケースもあると聞きます。
一方で、高収入への夢を抱いて始めたにもかかわらず、
なかなか成果を挙げられなくて半年でかなりの人が辞めてしまうといった話は
僕も聞いたことがありました。
もうかれこれ半年あまりが過ぎていますから、
もし見切りをつけているとしたらそろそろかなと僕は思っていたのですが、
そう思っていたのは僕だけではないらしく、
M君のところには最近、その類の”安否確認”の連絡が相次いで来ていたらしいです。
「あれから仕事はどうなった? また就活とかやってんの?」
「まだ保険屋を続けてるよ」
「えーっ?、そうなんだ~!」
とそんな失礼なやり取りが、すでに僕以外の何人かとも交わされていたのだとか。
ここ数カ月のM君はとくに立て込んでいたようなので僕もすんなりと会えたわけではなくて、
実際、彼はお盆にも帰省せずに土日も関係なく仕事をしていたとのことです。
ちゃんと休みを取っているのか聞いてみると、
何もない休日というのが最後にいつあったのか、すぐには思い出せないようでした。
でも見るからに元気そうな姿に僕は少し安心して、
そろそろ仕事が軌道に乗ってきたのかなというふうに思ってしまったのですが、
聞くと返ってきたのは、いやまさかでしょう、という苦笑いでした。
軌道に乗る乗らないは、まだまだ先の話。そう簡単なものではないのだそうです。
ただ、とにかく今は数多くの人と会っていろいろな話を聞くこと。
毎日いろんな年代だったりさまざまな職業の人から
家族に対する思いだとか将来の夢だとか、万一のための備えとか、
そうした話を聞くことが今は楽しくて、それで日々が過ぎていくのだと。
この仕事は確率の問題なんだ、とM君は言います。
生命保険文化センターの資料によると、日本人の世帯の生命保険加入率はなんと9割超。
1年間で払う保険料は45.4万円。
ということは、月額に直すと約3万7000円です。
この調査対象の世帯人数は平均3.4人で世帯主の平均年齢は56.3歳、平均年収は614万円とのことですから、
いわゆる平均的なサラリーマン層を想定した調査なのだろうという感じがしますが、
けっこう保険って行き渡ってるんですね。
そんな中でM君は新しく保険に入るお客を見つけることはできるのでしょうか?
彼に言わせると、人とたくさん会って話を聞いていくうちに、
今自分が持っている保障では足りないと不安に感じている人が一定の割合で必ずいることが分かるそうです。
だから一人でも多くの人から話を聞く。
同じ生命保険文化センターの調査のなかには、
「世帯主に万一のことがあった場合の経済的備えについて」という項目があります。
「大丈夫」「たぶん大丈夫」を合わせても26%。
さっきの世帯加入率9割超と比べると、これは意外と少ない感じがします。
大多数の人が何かしら保険に入ってはいるのだけど、内容には必ずしも十分満足していない…。
「少し不安」「非常に不安」を合わせると、72%にも上るんですね。
M君は実際に人と会うことで、おそらくこうした統計の実態を肌で感じているのでしょう。
会って話をした人の7割がもしお客になってくれるのであれば、
確かに仕事の確率としては悪くない感じがします。
そう上手くいくものではないような気もしますが…。
軌道、と僕が言ったときに、そこに乗るのはまだ先だとしても
軌道らしきものが存在することが分かるようにはなった、とM君は言いました。
確かに軌道は敷かれている、それが見えるような気はすると。
まあ今は仕事そのものを楽しめているようなので、
いずれ軌道に乗ることを願いつつ、M君の今後をもう少し見守りたいと思っています。
曰く、この世の中に未経験から始めて半年で軌道に乗るような仕事が
あったら知りたいということでした。
まあ、そう言われれば投資もそうですよね。
そんなウマい話があったら僕も知りたいです…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。

相続税へは、早めの対策を

生命保険は3種類しかない、という話を先月ここで書きました。
すべての保険商品は、定期保険、養老保険、終身保険の3つのうちのどれかが基本になっているという話でした。
定期保険は、いわゆる掛け捨ての保険。
保険期間が終わったら、キレイさっぱり何も残りません。
万一のことが起きなかった場合は、払ったお金も返ってきません。
養老保険は、積み立て保険などとも呼ばれる、貯蓄型の保険。
毎月コツコツと積み立てていったお金は、死亡するしないにかかわらず、満期になったら返ってきます。
資産運用という意味では、この養老保険がイチ押しという話をしました。
それで最後の1つ、終身保険はというと、その名のとおり死亡保障が終身(死ぬまで)続く保険です。
先日知り合いになった保険のプロであるkさんが力説するところによると、
とくに相続税対策として、威力を発揮する商品なのだそうです。
僕の知人が以前、親からの遺産相続のときに相続税で大変な思いをしたと言っていたのを思い出して、
kさんにその話をしたんです。
知人が親から引き継いだ一戸建ては、世田谷の駒沢大学駅から徒歩3分のところにあります。
今の日本の相続税は、税率が激しく累進的になっていることをご存知の方も多いと思います。
国税庁が作ったパンフレットにそれが記載されているので、見てみましょう。
ご覧のとおり、3億円以上の遺産を子が相続するには、
ざっくり言って半分近くを税金として納めなければならないわけです。
(配偶者免除などの制度があるので実際の率はもっと低くなりますが)
彼の父親が亡くなった時の遺産は、土地と建物とを合わせた評価額がぜんぶで4億ほどになりました。
参考まで、同パンフレットには遺産の価額と実際の相続税の例が載っていますので、
これも見ておきましょう。
いかがでしょうか?
万一のことがあったとき、お子さんに負担をかけるようにはなってはいませんか?
僕の知人が課せられた相続税は結局、なんと数千万円に。
おとなしく現金で納めるか、それができないとなると、
生まれ育った家を売却しなければならないといった事態に陥ってしまったのでした。
資産家ならではの悲劇です。
彼は今でも父親が残した世田谷の実家に住んでいるのですが、
そのために、貯めてきた貯金を取り崩したりあれこれと生活を切り詰めたりと、
見ていてかわいそうなくらいです。
僕が説明を終えると、kさんは残念そうに言いました。
「それはそれはお気の毒様でした。もし私に相談されてたなら、そんな思いはなさらずに済んだのに…」
そして終身保険のメリットを滔滔と僕に説いてくれたのです。
まず僕の知人のように、遺産が不動産だけの場合は遺族でこれを分けるといっても無理な話です。
それが、終身保険に入っておくことによって受取人を複数として設定することができるわけです。
また、遺族が受け取る保険金は、相続税の面でも優遇されているのです。
他の資産とは違って、法定相続人ひとりにつき500万円までが非課税で受け取れるのです。
さらに、契約者を子や孫にしておいて、保険料を親から子に贈与する、といった方法もとることができます。
生前贈与と呼ばれるこの対策は、贈与税の非課税枠が年間ひとり110万円までですので、
10年間で一人あたり1100万円を無税で子や孫に移転することができます。
そして、受け取る保険金は相続税ではなく、より税率の低い所得税で済むというメリットがあるのです。
とまあ、ざっと見ただけでも相続税対策に終身保険を活用すると税制上、
有利なことがたくさんあることがわかります。
あえて不利(というか厄介)な点を挙げるとするなら、
やはり終身保険は保険料が高いということです。
各社の相場は、たとえば35歳男性で死亡保障2000万円、60歳までに払い込みを済ませるとなると、
ざっくり、月額4万円台。
これが、45歳の契約だと月額8万円近くにまで跳ね上がります。
相続税対策をお考えの方は、早めに手を打たれることをお勧めします…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。 

やると決めたら、最後まで

生命保険のなかでも最もシンプルなのが定期保険。
毎月一定額の保険料を支払っておき、その間に死亡したり高度障害になったりすると保険金を受け取ることができるという、
いわば保険の原型みたいな商品です。
ネット上で保険料の試算ができる保険会社のサイトがいくつかありましたので、
契約者が35歳男性、死亡・高度障害保険金が1,000万円、60歳満期の定期保険について
保険料を調べてみました。
たとえばオリックス生命にはネット専用の商品があって、
保険料は月々2,697円。安いですね。年間でもたったの3万2,364円です。
これを60歳までの25年間払い続けると、80万9,100円。
この約81万円を支払うことで、その間に万が一のことがあった場合に1,000万円を受け取れるわけですから
安いといえば安いかもしれませんね。
でも前回見たとおり、いまの日本人で60歳までに死亡する人は、おおざっぱにみて10人に1人です。
つまりこの定期保険を買った人10人のうち9人までが、ただ保険料を保険会社に支払って、
何も受け取らずに契約は満了してしまいます。
その、払った保険料を取り返す、というのが今回のお題でした。
前回登場したkさんがおススメの保険商品としては、”養老保険”がそれにあたるそうです。
生命保険は難しくてわかりづらいという話を耳にすることもありますが、
基本的には定期保険、終身保険、養老保険の3種類しかありません。
そこに医療保険や傷害保険が組み合わさったり、受け取り方を選べたり、
保険料や保険金が外貨建てだったりと、それぞれの保険会社の得意な分野で細分化されていることで、
わかりづらい印象になってしまっているだけなんですね。
一定期間の保険料の支払いに対して、保険期間もその期間内で終わるのが定期保険。
保険料の払い込み期間に関わらず、被保険者が死亡するまで保険期間がまで続くのが終身保険。
保険料の支払い期間が終わった時点で、払った保険料が返ってくるのが養老保険。
定期保険では”払い損”が起こりうるのに対して、養老保険は基本的にその心配をする必要がないということで、
まさに”払った分を取り返す保険商品”ですね。
そこで35歳男性の保険料について、ネット上で保険料などが公開されている養老保険の商品を比較してみました。
最初にみた定期保険と比べると、たとえば同じアフラックでも
定期保険の保険料が3,960円に対して養老保険だと31,580円。
保険金が同じ1,000万円でも月々の保険料はケタがひとつ違います。
なるほど、養老保険というのは払った分を取り返せる保険商品という点ではすばらしいのですが、
良いモノは値段が高い。これはどこの世でも当然の摂理ですね。
でも養老保険で受け取れる満期金というのは、払い込み総額以上の額になって返ってくるのです。
たとえば上の表のなかではメットライフアリコだと930万円程度の保険料に対して
満期保険金が1,000万円ですから約7.2%の利回りということになります。
これはなかなか悪くない利回りです。
養老保険が”積み立て保険”というふうに呼ばれるのも、うなずけますね。
こうやって見てくると、資産運用という観点で保険商品を考えるのもアリかなというふうに思えるようになってきました。
ただ、前にも触れましたが保険の場合は月々の支払いが数万円でも、
満期までを合計すると支払い総額が数千万円になることを常に頭においておかなければなりません。
もし途中で解約するとなった場合は解約返戻金なるものを受け取ることもできますが、
当然ながらそれは当初の満期保険金額よりも低く設定されてしまいますのでマイナス運用となってしまいます。
養老保険は、保険としては”払った分を取り返せる”という大変なスグレ物ですし、
また資産運用という面でも利回りの魅力があることがわかりましたが、
それはすべて、保険期間が満了することが大前提というわけです。
やはり一度やると決めたら最後まで払い通す覚悟で各社の商品をじっくりと見比べて、慎重に選ぶ必要がありますね…。

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払った分は、取り返す

先日、ある集まりで保険の代理店をやっている方(Kさん)と知り合う機会がありまして、
世間話から仕事の話まで、あれこれといろんな話をしました。
保険というと僕は今まで掛け捨て以外のものを買ったことがなくて、
保険商品を選ぶときにはあくまでも純粋に保険としての機能を比較検討の材料にするべきだと思っていたので、
話の流れが保険に関わる内容になったときに、そのような話もしたんです。
営業の口車に乗せられてあれもこれもと必要のない特約をつけたりすると、
毎月の保険料がやたらと高くつく印象がありますよね。
保険は家と並んで多くの人にとって生涯もっとも高価な買い物のひとつ。
月々の支払いはたかだか2、3万とナメてかかってはいけません。何十年も払い続けると、
支払う総額は千万円単位になってしまうのです。
いわゆる貯蓄型の保険で満期がきたらどーんと返ってくるようなものも、僕はどうも胡散臭く思っていました。
結局、毎月支払う定期保険の保険料に加えて、さらによくわからないおカネを毎月毎月支払って、
しかもその運用まで保険会社に委ねてしまうというのが、養老保険といわれる商品です。
でも僕みたいにずぼらな人間は、何事もできるだけでシンプルでわかりやすくしておきたい習性があって、
保険は保険、貯蓄は貯蓄、投資は投資と、切り離して考えたほうがすっきりするのです。
Kさんにこんな話をすると、彼は次のように切り返してきました。
「YUKIOさん、それじゃあ参考まで、ちょっとクイズです。
YUKIOさんが生まれたときに、同じ年に生まれた人を全国で100人選んだとして、
その人たちのうちで、YUKIOさんが60歳になったときにまだ生きているのは何人いると思いますか?」
僕は自分が60歳になったときのことを想像してみてから、
小学校のときのクラスの友だちの顔を何人か思い浮かべました。
まだだいぶ先の話だなあと思いつつ、それまでにいろんなことあるだろうな、
その頃までみんな元気にしてるのかなあ、でも全員無事というわけにはいかないかもしれないな、
などと考えを巡らせた後に、「半分?いや、60~70人位は生きてるでしょうかね?」と言ったんです。
みなさんの感覚ではどの位でしょうか?
するとKさんは、してやったりといった笑顔を浮かべてこう言いました。
「残念でしたYUKIOさん、100人いるうち、実は90人以上。
男なら91人、女性だと95人がまだ生きているんですよ。
意外と思うかもしれませんが、人間ってけっこう死なないものなんですよね…」
僕の想像力はあまりにも素朴すぎて的外れでした。それにしても91人というのは確かにすごいです。
たとえば小学校のときのクラスが40人だったとすると、60歳になったときに同窓会をやろうという話が持ち上がったとして、
連絡がとれて都合さえ合えば、クラスの2~3人を除いて出席可能なはずというわけです。
医学の進歩が目覚ましい成果を挙げてきたことを実感しますね。
同時に、長寿大国日本、超高齢化社会という言葉がドサッと僕の中に降りてきました。
このあたりのことは厚生労働省が毎年算出している”簡易生命表”という資料に詳しくて、
10万人あたりの生存数などの数値が公表されています。
                                          厚生労働省「平成22年簡易生命表」より作成
上の表はそれをもとに作成したのですが、見ると、60歳の男性の生存数は9万1282人。
100人あたりに直すと、確かに91人です。
保険という観点からすると、たとえば掛け捨ての保険を買ったとしても、
自分が60歳までに死ぬ確率は1割にも満たない…。
つまり保険金を受け取れる可能性は、1割もないということになります。
では支払った保険料はどうなるのか?
もちろん、保険会社の収入となります。
掛け捨ての定期保険は、9割以上の人がただ生命保険会社におオカネを貢いで終わり、
ということを繰り返していることになりますね。
「悔しいと思いませんか?」
Kさんは勝ち誇ったような顔で僕にたたみかけます。
「せっかく長期間コツコツと支払ってきたのに、それがみすみす全部保険会社の懐に入るなんて、許せますか?」
僕は保険というものはそういうものだとこれまでは割り切ってきたつもりですが、
このように挑発されると、なんだか悔しくなります。
次回、それを取り返す方法を、探ってみたいと思います…。

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