プライスレス…

酒田五法のなかの一つ「三空」といえば、カリスマトレーダーのハンドルネームとしても知られています。
2003年に60万円で株を始めて4年後の2007年には2.5億円にしたということで、
マネー誌などで一躍有名になった30歳そこそこの青年ですね。
その三空氏が先日(5月26日)、FX情報サイト”ザイFX!TV”のトークバトルに生出演していたのを僕はたまたま見ていました。
この番組は21時から始まって23時までの約2時間の配信でしたが、
ちょうどその最中の21時30分に米新規失業保険申請件数の発表があり、そこでドル円相場は大きく動いたんです。
この指標自体は本来はさほど重要視されていないはずでしたが、
それまで膠着状態が続いていたドル円相場には、
予想を若干上回っただけの42.4万件という数字でも思いのほか大きなインパクトとなって
相場はわずか30分ほどでドル円が50銭以上も下落するという波乱の展開となりました。
そのときの5分足チャートです。
ちょうど21時半を過ぎたあたりから一気に落ち込んでいますね。これには僕も驚きました…。
三空氏はこの生放送の場で思い切った円買いのトレードを敢行したのですけど、
みるみるうちに下がっていくドル円に対してなす術もなく、
番組の後半、210万円の損となったところで結局ロスカット。
いやあ、やっぱりFXというのは怖いですね。
カリスマと呼ばれる人の顔が見る間に青ざめこわばっていくのは、番組としては楽しめたという人もいたかもしれませんが、
ネット上で2000人もの人がリアルタイムで見ている前で、この短時間で数百万円も損をするというゲーム感覚は、やはり怖いです。
僕も下がりきる手前のところでドル買いを入れたので、三空氏ほどの額ではないものの、まだ含み損を抱えています…(涙)
所詮、FXというのはゼロサム・ゲーム。誰かが得をした蔭では必ず誰かが損をしているし、リターンの裏には必ずリスクがある。
大損するのが嫌なら派手な一発勝負には手を出さない…。
これって博打の基本ですよね(笑)
そう、相場の予測は為替がいちばん難しい。とりわけFXというのは、やはり基本的にとても怖いものです。
そんな当たり前のことをあらためて再確認させてもらったわけでした。
怖さのレベルは全然違いますが、かつて経済企画庁や外資系証券の金融工学の最先端の場で活躍していながら、
その扱いの怖さ、危険性の高さに危機感を募らせて仕事を辞めて、いまはまったく違う世界、
ロハスな生活の研究を進めている人がいます。
藤原直哉という経済アナリストがその人で、
藤原氏はこれからの農業に可能性を見出して小田原市内の里山で教育用の田畑を耕作したり、
長野県飯田市の遠山郷(とおやまごう)に自然と人情に支えられた21世紀のライフスタイルを研究する学校を開校したりと、
およそ金融工学出身の人としては想像しづらいことを進めている、ちょっと突き抜けたタイプの新しいリーダーです。
僕が以前、出版社で本の編集をやっていた時に担当していた著者のひとりなのですが、
最近久しぶりに出た本の中では氏が進めているいくつかのプロジェクトが紹介されていて、
そこにはたとえばこんなユニークものもありまして…。
 ・21世紀型家庭再生計画”サザエさんプロジェクト”
 ・21世紀型里山再生計画”トトロプロジェクト”
興味のある方はぜひご一読をお勧めします。
マネーの最先端から一転して地に足のついた生き方を選んだ藤原氏の熱いメッセージ。
この国の将来像や理想の生活について思いを巡らせると、
もしかしたらおカネがどうこうという以上の何か、開けた世界が見えるかも知れません…。


※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。 

好奇心も武器のうち

念のために一応お断りしておきますと、チャート分析の世界に足を踏み入れるということは
僕的にはとりもなおさず、”危ない橋”に一歩踏み出すのとほぼ同義ではないかというふうに理解しています。
チャート分析に関しては古くから様々な手法が研究されてきていて、
そこで説かれているルールを忠実に守っていけば、それなりに勝率を上げることは可能だとは思いますけど、
でも、もちろん絶対というものは、当然ながら、ありません。
ですので、チャート分析について深入りしますと、
下手をすると僕が通ってきた”危ない橋”に先生方をご案内(笑)することにもなりかねないですね。
“危ない橋は渡らない”というテーマから考えると、ここから先は、
実践するためというよりも好奇心を満たすつもりで読んでいただくというのが賢明かもしれません。
チャート分析を実際の投資に活用して成功すれば、それはそれは最高に楽しいことですが、
常にリスクを伴うのが勝負の世界。
ルールに忠実に則って投資を行ったところで、うまくいかない時はやっぱり損をしてしまいます。
でも敢えてここで取り上げるのはなぜかというと、
それはまあ、ひとことで言えば、面白いからです。
損得を抜きにしても、チャート研究の世界は僕も最初思っていたよりもずっと奥が深くて、
知れば知るほど好奇心が追い打ちをかけてくるのも事実です。
好奇心も武器のうち。もちろん、運が良ければ(笑)投資の勝率アップにも寄与するわけですし。
というわけで、先週お話したローソク足の発展形、
本間宗久が発明したとされる”酒田五法”のエッセンスをちょっとだけご紹介しますと…。
代表的なのが、三山(さんざん)と呼ばれる形で、
チャートが描く流れが大きく3つの山のようになっている場合は、
これから相場が下向きになるというパターンですね。
とくに真ん中の山が少し高くなっているのを三尊(さんぞん)と呼びますが、
これは海外でも”ヘッドアンドショルダー”と呼ばれていて、
実際にいろんなチャートでしばしば見られる売りサインです。
なぜ3回目に下がることが多いのかというのも気になりますが、
これはたとえば自分が持っている株がいま値を上げているときの心理状態を考えれば分かります。
相場が一つの山を過ぎてから一旦下がってからまた上げてというのを2回繰り返しますと、
上昇の勢いが鈍ったのではないかとふつうは感じるでしょう。
そして3回目の山が2回目の山よりも低かった場合は、これはそろそろ売っておいたほうが無難かな、と思ってしまいます。
大勢の人が同じチャートを見て同じようなことを考えているわけですから、
結果としてそこから先は下げ相場になるというのもうなずけますね。
相場は(とくに短期の取引の場合は)心理戦の側面が大きいということを、あらためて感じらさせれる基本法則です。
酒田五法は数あるチャート分析法のなかでも日本人の発想のしかたや心理の読み方が反映されていて、なかなか味があります。
他に三川(さんせん)、三空(さんくう)、三兵(さんぺい)、三法(さんぽう)というのがありますので、
興味を持たれた方は、どうぞこちらの橋のほうへ(笑)…。
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チャートを使う

チャートというと、もしかしたら高校の時の参考書を思い出す方がいらっしゃるでしょうか?
“数研の赤チャート”とかありましたね。
僕は当時、なんとなくみんなが使っているのと同じのがイヤだったので”寺田の鉄則 代数・幾何”を買ったのですが、
どこが良いのかさっぱり分からないままだんだんページを開く回数が減ってきて、
そのうち机の上に置きっぱなしになり、そのまま部屋の景色の一部になってしまいました。
そこまで行ってしまうと参考書としての存在価値はなくなり、
気がついたときには僕は数学に対する苦手意識が芽生えることになり、
けっきょく高校3年の秋になってから”文転”したクチであります。
逆バリをしては負けることを繰り返してきた僕ですが、今にして思うと
僕の逆バリ失敗人生はこの辺から始まったような気もします(笑)
まあそれはさておき。
ここでいうチャートというのは、もちろん株価チャートなど、相場の動きを示すグラフのことです。
株式相場、商品相場、為替相場など、相場の世界で生きる人にとって、チャートは昔からなくてはならないものでした。
でも今ほど広く一般の投資家にまでチャートが活用されている時代は、かつてなかったのではないでしょうか?
以前はチャートを分析するなんていうことは証券会社の人や投資家に限られていたでしょうし、
投資家といえばすなわちある程度の資産家を意味していたと思います。
それが今や、”ミセス・ワタナベ”のような主婦層だとか僕みたいな個人までが
リアルタイムで世界中の株価や為替の動きを見てはチャート分析をして一喜一憂する時代。
ネットトレードやチャート分析なんかはすべてパソコンの普及に伴って広まってきたわけですから、
まだせいぜい10年とか20年ちょっとの話です。
情報技術の進歩と普及のスピードというのは本当にすごいなと、あらためて思ってしまいます。
チャートのなかでも基本中の基本は、やっぱりローソク足。
ローソク足は Candle Chart だとか Candle Stick Chart だとか呼ばれていて
世界中で親しまれているチャートの記述方法です。
これは、なんと江戸時代の日本人が発明したんですね。
ろうそくのような形をした1本の線に、一日の値動きの始値と終値、高値と安値という
4つの情報が込められているところが、画期的です。
江戸時代には米相場の取引がさかんに行われていて、そこで活躍したなかのひとりに
出羽の国の米商人で本間宗久(そうきゅう)という人がいました。
本間宗久はローソク足を応用した”酒田五法”(次回お話ししようと思います)を駆使して、莫大な富を手にした人物ですが、
当時、”本間さまには及びもないが、せめてなりたや殿様に”という歌が流行ったほどの有名人だったそうです。
僕は個人的には、ローソク足は世界に誇る日本人の大発明だと勝手に思っているのですけど、
日本人には、なんというか、こういう地道で緻密な作業を究めて行くセンスがありますよね。
ちなみに上の図は、あるFX業者比較サイトからコピペしたのですけど、
図の中に「上ヒザ」「下ヒザ」と書いてあるところ、これは言わずもがな、
正しくは「上ヒゲ」「下ヒゲ」です。
おそらくは手書きの原稿を書いた人とは別の人が文字を入力するときに、
「ゲ」を「ザ」と読み間違えたみたいですね。
なかなか面白かったのでこのまま載せさせていただきます(笑)
僕もかなり字がきたない方なので人のことは笑えませんが…。

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経験則

イースター休暇というのは多くの日本人にとって(もちろん僕にとっても)あまりなじみのないものですが、
キリスト教圏の国々では復活祭は、年中行事のなかでもとても重要なイベントなのだそうですね。
クリスマス休暇と並ぶ長期休暇ということで、ほとんどの会社が休みになって
みんな故郷の家族の元に帰ったり、バカンスを楽しんだり、のんびり過ごす時期だとのこと。
それで、イースター休暇の前後の外国為替の取引は薄商いで方向感がなくなると言われていて、
FXトレーダーたちの間ではこの時期、下手に大きな売買はせずに様子見ムードになる傾向が定着しているようです。
一方、日本国内においては、実はこの連休の合間の時期の株価が、
なかなか興味深いことになっているのをご存じでしょうか?
日経平均株価を算出・運営している日本経済新聞社インデックス事業室が、
過去のデータを集計して作成した資料を書籍にまとめているのですけど、(『日経平均公式ガイドブック』)
それによると、5月1日と5月2日の2日間は経験的に、株価が上昇する確率がかなり高い日なのだそうです。
1949年5月17日から2010年7月31日までの日経平均の上昇と下落の回数を
日付ごとに集計してランキングにしたのが上の表です。
見ると確かに、その日に株価が上昇する確率の高い方から並べた結果は、
5月1日と2日という日は、1年365日あるうちの何と2位と4位。これはなかなか驚きですね。
とくに理論として説明できるような根拠はないらしいのですが、
過去のデータを集めるとどうやら経験則として一定の傾向が見られるというわけです。
以前にも書きましたが、
“アノマリー”と呼ばれるこのような経験則は、確率の世界で投資を考えるときには
なかなか参考になりますよね。結果としてそれが役に立つならば、根拠はどうだっていいわけです。
東京オリンピックの開会式が10月10日に行われたのは、過去の天気の蓄積データの中から
晴れる確率の最も高い日を選んで決められたというのは有名な話ですよね。
逆に、今度は株価が上昇する確率の低いほうを見てみましょうか。
なんと5月中旬の日付が、20位以内に4日も入っています。
ことしのこの時期がどうなるかにも、ちょっと注目してみたいですね。
なんだか”マーフィーの法則”を思い出してしまいました…。
“トーストのバターを塗った面が下を向いて落ちる確率は、カーペットの値段に比例する”
“急いでいないときは、車が完全に停止したとたんに信号機は青に変わる”
“気のきいた文句をひらめかせる最良の方法は、手紙に封をすることである”

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勢い。

以前もここでご紹介した投資家のジム・ロジャーズ氏について、
先日(4月16日)、朝日新聞に写真入りの記事が大きく掲載されていました。
「3.11 投資家の目」ということで、震災後の日本についてインタビューに答えた内容が、「オピニオン」として取り上げられています。
ご覧のとおり1ページの紙面の半分以上を割いていますし、ブログやツイッターなどでも
多くの人がこの記事についてコメントしたりつぶやいたりしていて、あらためて反響の大きさがわかります。
その記事では、まず震災が日本経済に与える影響について、ロジャース氏が短期的な影響は出るとしながらも、
やがて再建に伴う建設ブームが起きて、かつてない需要が生まれることが期待できると言っていることを、
わりとさらっと流しています。
インタビューはその後に続けて、日本が再び成長軌道に乗るために最も大切なこと、という
本質的なほうへ水を向けていて、
実は記事としてはここからがメインで、震災とか復興云々というよりも、
むしろ日本に対するかねてからのロジャーズ氏の持論を紹介するような形になっています。
氏のコメントは単純明快です。日本の成長に必要なのは、
 ・子供を増やすこと
 ・移民を受け入れること
つまり大ざっぱにいえば、人口減少で収縮気味の経済を、人を増やすことで元気づけるといったイメージでしょうか。
さすが世界を股にかけて駆け回ってきた冒険家。分かりやすいといえば分かりやすいですね。
そして、
 ・日本は今後も製造業に頼り続けるのは難しい
 ・強い円は歓迎。円高は日本国民を助ける
…日本国内の経済評論家などからは、なかなか出てこないコメントですね。
ロジャーズ氏が多くの日本株を保持していることはよく知られていて、このインタビューのなかでも
「私は本当に日本を愛している」と強調した上で、
「日本はいずれ子供を持ち始めると思うから、タカラトミーやサンリオの株も持っている」ことを明かしています。
でも日本が本当にそんなふうに、子供を増やすような国になるんだろうか?と僕は思ってしまいましたが、
記事中のロジャーズ氏のコメントも、日本の人々の考え方がそのように変わることについて
「懐疑的ではある」が、「そう願っている」と、ちょっと弱気で中途半端な締めくくり方をしていました。
実際に日本がどうなるかは別として、僕なりに面白いなと思ったのは、
ロジャーズ氏の感性というのは結局、人間の生命力というか、勢いというか、そうしたものに対して
おそらく素直に反応しているのだろうなと思えたことでした。
そもそも投資だとか資産運用というのは、ここよりもどこか勢いのある元気のいいところにおカネを預けて、
その人たちが活動して儲けた分を、預けたよりも殖やして返してもらいましょう、という行為なわけです。
ファンドマネージャーという仕事をしている人たちは、言ってみればその”勢い”を、冷徹に見極めるのが仕事、
といってもいいかもしれません。
“勝ち馬に乗れ””当たり屋につけ”とは、
勝負師たちの間で昔から言われている言葉ですね。
ぜんぜん話は変わりますが、僕の家の近所にいつも行くラーメン屋さんがあって、
おばちゃんとその弟さんだけでやってるそのラーメン屋さんはカウンターだけで6人座ればぎゅうぎゅうの満席という
こぢんまりとしたお店です。
日高屋とか王将も近くにあって、そちらも確かに安くて美味いのですが、
なぜか僕はお酒を飲んだ帰りについつい足が向くのはこのおばちゃんのお店のほうでした。
トンコツ系やら魚介系や横浜家系(いえけい、と読みます)などが駅前にどんどん出店するのを横目に見ながら
流行とは無縁にもう30年以上マイペースでやってきたという、いわば街の老舗です。
もともと、縮れた黄色い太麺はどちらかというと柔らかめだし
スープはとくにこれといった印象が残るわけではない古典的な醤油味で、
目新しさやインパクトはないのですけど、でも僕にとっては、
長年守ってきたなんでもないふつうの味が、なんとなく落ち着くのでした。
僕はそこで酔いを醒ましながらおばちゃんとよく話をするのですけど、
でも最近行ったときは、おばちゃんいわく、震災以来すっかりヒマになってしまって、
このままではこの先とてもやっていけそうにない…そう嘆いていました。
たしかに最近、なんだか味に勢いがなくなってきたように感じていて、
気がついたらすこし足が遠のいていたなあなんていうことに気づいてしまったのですけど。
いつものとおり、また来るね、と言って僕は店を後にしましたが、
時間というのは思っていたよりも冷酷に、人から勢いを奪っていくものなのかもしれないなと感じさせられたのは、
ちょっと寂しいことでした…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
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