勢い。

以前もここでご紹介した投資家のジム・ロジャーズ氏について、
先日(4月16日)、朝日新聞に写真入りの記事が大きく掲載されていました。
「3.11 投資家の目」ということで、震災後の日本についてインタビューに答えた内容が、「オピニオン」として取り上げられています。
ご覧のとおり1ページの紙面の半分以上を割いていますし、ブログやツイッターなどでも
多くの人がこの記事についてコメントしたりつぶやいたりしていて、あらためて反響の大きさがわかります。
その記事では、まず震災が日本経済に与える影響について、ロジャース氏が短期的な影響は出るとしながらも、
やがて再建に伴う建設ブームが起きて、かつてない需要が生まれることが期待できると言っていることを、
わりとさらっと流しています。
インタビューはその後に続けて、日本が再び成長軌道に乗るために最も大切なこと、という
本質的なほうへ水を向けていて、
実は記事としてはここからがメインで、震災とか復興云々というよりも、
むしろ日本に対するかねてからのロジャーズ氏の持論を紹介するような形になっています。
氏のコメントは単純明快です。日本の成長に必要なのは、
 ・子供を増やすこと
 ・移民を受け入れること
つまり大ざっぱにいえば、人口減少で収縮気味の経済を、人を増やすことで元気づけるといったイメージでしょうか。
さすが世界を股にかけて駆け回ってきた冒険家。分かりやすいといえば分かりやすいですね。
そして、
 ・日本は今後も製造業に頼り続けるのは難しい
 ・強い円は歓迎。円高は日本国民を助ける
…日本国内の経済評論家などからは、なかなか出てこないコメントですね。
ロジャーズ氏が多くの日本株を保持していることはよく知られていて、このインタビューのなかでも
「私は本当に日本を愛している」と強調した上で、
「日本はいずれ子供を持ち始めると思うから、タカラトミーやサンリオの株も持っている」ことを明かしています。
でも日本が本当にそんなふうに、子供を増やすような国になるんだろうか?と僕は思ってしまいましたが、
記事中のロジャーズ氏のコメントも、日本の人々の考え方がそのように変わることについて
「懐疑的ではある」が、「そう願っている」と、ちょっと弱気で中途半端な締めくくり方をしていました。
実際に日本がどうなるかは別として、僕なりに面白いなと思ったのは、
ロジャーズ氏の感性というのは結局、人間の生命力というか、勢いというか、そうしたものに対して
おそらく素直に反応しているのだろうなと思えたことでした。
そもそも投資だとか資産運用というのは、ここよりもどこか勢いのある元気のいいところにおカネを預けて、
その人たちが活動して儲けた分を、預けたよりも殖やして返してもらいましょう、という行為なわけです。
ファンドマネージャーという仕事をしている人たちは、言ってみればその”勢い”を、冷徹に見極めるのが仕事、
といってもいいかもしれません。
“勝ち馬に乗れ””当たり屋につけ”とは、
勝負師たちの間で昔から言われている言葉ですね。
ぜんぜん話は変わりますが、僕の家の近所にいつも行くラーメン屋さんがあって、
おばちゃんとその弟さんだけでやってるそのラーメン屋さんはカウンターだけで6人座ればぎゅうぎゅうの満席という
こぢんまりとしたお店です。
日高屋とか王将も近くにあって、そちらも確かに安くて美味いのですが、
なぜか僕はお酒を飲んだ帰りについつい足が向くのはこのおばちゃんのお店のほうでした。
トンコツ系やら魚介系や横浜家系(いえけい、と読みます)などが駅前にどんどん出店するのを横目に見ながら
流行とは無縁にもう30年以上マイペースでやってきたという、いわば街の老舗です。
もともと、縮れた黄色い太麺はどちらかというと柔らかめだし
スープはとくにこれといった印象が残るわけではない古典的な醤油味で、
目新しさやインパクトはないのですけど、でも僕にとっては、
長年守ってきたなんでもないふつうの味が、なんとなく落ち着くのでした。
僕はそこで酔いを醒ましながらおばちゃんとよく話をするのですけど、
でも最近行ったときは、おばちゃんいわく、震災以来すっかりヒマになってしまって、
このままではこの先とてもやっていけそうにない…そう嘆いていました。
たしかに最近、なんだか味に勢いがなくなってきたように感じていて、
気がついたらすこし足が遠のいていたなあなんていうことに気づいてしまったのですけど。
いつものとおり、また来るね、と言って僕は店を後にしましたが、
時間というのは思っていたよりも冷酷に、人から勢いを奪っていくものなのかもしれないなと感じさせられたのは、
ちょっと寂しいことでした…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。