先日テレビで高齢者医療について各国の取り組みを紹介していました。
番組の中では、大きな政府の代表格である「超福祉国家デンマーク」と
元来小さな政府を目指してきた「アメリカ」が、対照的に語られていました。
医療に市場原理主義を持ち込んだアメリカにおいて、
高齢者のみならず全ての国民が苦労していることは周知の事実ですが、
超福祉国家のデンマークでさえ、満足な医療が行われていないという現実がありました。
一般的に、デンマークは高齢者にとって優しい社会だと思われがちですが、
デンマークにおいて高齢者と家族は完全に分離されるシステムとなっているため、
高齢者にとって、本当の意味での幸せは得られていなのではないしょうか。
デンマークでは一定年齢になると、施設に入ることになっています。
共働き世帯が9割以上であり、自分の親の面倒を見ることができないという現実から、
このような仕組みになっているそうですが、高齢者の立場からいえば、
本当は自分の子供に面倒をみてもらいたいというのが本音だと思います。
また、住み慣れた家を離れて施設に入ることは、精神的な負担もあるため、
高齢者の中には施設での生活を避けて、自宅に戻ってくる人もいるようです。
しかし、そうなると必要な医療を受けられないため、孤独死の危険性が高まります。
最期の時間をどこで過ごすかということは、人間にとって非常に重要なことだと思います。
要するに、本人にとってどこで最期を迎えるかということが、幸せなのかということです。
おそらく、病院よりも自宅で死にたいと考える人の方が多いでしょう。
日本においても、近年は圧倒的に病院で亡くなる方の割合が多いです。(上図参照)
しかし、戦後間もない頃(1950年代)は8割以上の方が自宅で亡くなっていました。
必ずしも、病院で亡くなることが良くないと言っている訳ではありませんが、
「在宅医療」の普及によって、少しはこの状況に変化が現れるのではないかと期待します。
というのも、最近「在宅医療施設」の求人が増えつつあるからです。
特に、わたしが主に担当している東京・神奈川・名古屋において、
在宅クリニックの話題をよく耳にします。
この背景には、近年の診療報酬改定により、在宅医療の充実を図る方向性が
打ち出されていることが大いに関係しています。
また、このような流れをチャンスと捉えて、
医師ではない方が在宅クリニックの経営に新規参入する事例が増えてきました。
よって、最近の在宅クリニックの運営手法は非常に先進的であり、
そこで働くドクターも、若くて前向きな方が非常に多いです。
しかし、この在宅医療においては、ドクターの向き不向きもあるようです。
その理由は、ヒエラルキーの違いです。
これはある在宅医療関係者から聞いたお話なのですが、
病院においては医師を頂点とするヒエラルキーが存在しますが、
在宅医療においては「患者さん本人」の価値観を最も尊重するため、病院とは異ります。
関係者が集まってお互いの意見を交換し、みんなで物事を決めていくという考え方が重要です
よって、このようなやり方になじめない一匹狼的なドクターには向かない職場だといえます。
さらに、先日お会いした在宅医療クリニックの院長先生のお話しによると、
医療従事者と患者さん、患者さんのご家族の間の信頼関係を非常に重要視されていました。
在宅医療では、患者さんと1対1で向き合うチャンスが多くあります。
患者さんの生活の場を定期的に訪れることで、医学的な問題だけではなく、
心理的な問題や社会的な問題まで含めて相談に乗る機会が増えてきます。
そんな中で、患者さんから「信頼」していただけていると感じることが最大の喜びであり、
医師として診療を続けるモチベーションとなっているとのことでした。
在宅医療は、単なる大規模医療機関における診療を減らすだけではなく、
医師と患者さんの「信頼関係の回復」を担っています。
そんな在宅医療を希望する、若手医師のご登録をお待ちしております。