本日は、産業医というお仕事について私見を書かせていただきます。
何分わたくしは医師ではないため、医学的なことは分かりませんが、
わたしがこれまでに企業の内部で経験した中で、
従業員や経営者からみた産業医というお仕事の一部を記載したいと思います。
まず、産業医とは非常に特殊な医師であり、公にはあまり知られていない存在だと思います。
また、企業側からすると、単なるコストの一部として捉えている企業も多いでしょう。
そして、従業員からすると、存在自体が知られていないケースも多いといえます。
実際にうつ病や神経症になって初めて、
産業医の存在を会社側から知らされるケースも多いです。
また、会社に属する産業医は、あくまでも会社側の人間だと考え、
始めから相談しないケースも多いといえます。
その理由は、産業医と人事部は裏側でつながっており、
カウンセリング時にどのような内容を話したか克明に記載されたカウンセリングシートを、
人事部経由で上司に渡されていたというケースがあるからです。
そうなってくると、従業員側からすると、もはや産業医は頼れる存在ではなく、
会社側の回し者というイメージを抱かざるを得ません。
産業医に相談することで上司の評価を下げるリスクがあるようだと、
従業員は治療に対して消極的にならざるを得ません。
次に、経営者側からみた産業医は、最近でこそ重要視されてきましたが、
少し前までは、法律的な要件さえ満たせば、
できるだけコストが低く抑えられる医師を求める企業が多かったように思います。。
具体的には、定年後の高齢医師を安い給与で雇用するケースです。
ところが、インターネットが普及したことにより、業務のトラフィックが爆発的に増え、
長時間労働が当たり前になってました。
また、グローバルな事業展開により海外駐在する従業員も増加したことから、
メンタルに異常をきたす従業員が一気に増加しました。
それに伴い、最悪の場合には企業イメージ悪化や、提訴のリスクを抱えることになり、
企業側も対策を練らざるを得なくなりました。
いわゆるブラック企業(2chによく出てくる企業)も、提訴だけは避けたいと考えています。
企業が業績を伸ばすためには、従業員のパフォーマンスが継続的に得られる必要があります。
従業員のパフォーマンスは、従業員のモチベーションに比例します。
それらが低下すると休職や離職が増加し、最終的には生産性の低下につながります。
かつて私の知り合いの社長がこんなことをいっていました。
「従業員は3年で辞めてもらうのが最も効率がよい」
「その代り新しい社員が必要になるから採用ブランドを構築する必要がある」
「社員は新陳代謝を繰り返した方が会社は活性化する」
しかし、この会社は現在では一時の勢いを失い、今では風前の灯です。
このようなケースでは、対処療法でメンタルカウンセリングの数を増やしたとしても、
なんら効果はありませんでした。
なぜなら、経営陣は「メンタル的に弱い人間はいらない」と考えているからです。
この場合、産業医がすべき仕事は、経営陣の考え方を根本から変えることでしょう。
しかし、ビジネスモデルとして「社員の新陳代謝による人件費の削減」が必須となっている場合、
ひとりの産業医が経営陣を説得し、会社の就業制度そのものを変えていくことは非常に困難だといえます。
日本において、実質的な産業医活動をしている医師は数千人といわれています。
しかも多くの場合、産業医派遣会社から派遣される嘱託医師であり、
実効性のある対策案を、企業側に提言している産業医は限られています。
対処療法的に、体調不良の従業員に治療を行い、復職に導くことも大事ですが、
今後の産業医に求められる仕事は、職場が健康になるための方策を企業の上層部に働きかけ、
職場そのものの自浄作用を促すことが重要な役割ではないでしょうか。
そのためには、一般企業のビジネスモデルや経営陣の考え方も知っておく必要があると思います。
また、企業の経営陣に求めることとしては、以下のことが挙げられます。
1,ここ10年で従業員の働き方は大きく変わっており、
メンタル疾患は誰でもかかる可能性があるということ。
2,また、そこにかけるコストは単なるコストではなく、
それにより将来企業が受取るメリットは膨大なものとなるということ。
3,そして、優秀な産業医の先生を採用するためには、それなりの待遇が必要だということ。
わたしたちのような人材紹介会社も、これらのことを企業側に伝えることで、
産業医の待遇改善に努めたいと思っております。
今後も優良な産業医求人の開拓をしていきますので、JMCをよろしくお願いいたします。