周期

今年の冬は、本当に寒かったですね。
まだ安心するのは早いかもしれませんが、それでも立春を過ぎてようやく、
1月いっぱい続いた、あの肌を刺すような寒さからは少し解放された感じがします。
このブログも”冬眠状態”でしたので、もしかしたらご心配くださっていた向きもおありだったかもしれません。ゴメンナサイ。
季節の変わり目を迎えて、そろそろ平常の状態に戻していきたいと思っております。
それでいつもの帰り道、僕は海沿いの国道を自転車で走って帰るのですけど、
左手に見える海面の様子が今日はいつもとは少し違う感じがしました。
海面がずいぶん低くて、うねりがほとんどない静かな海面なのに白いしぶきがさらさらと立っているのに気が付いたんです。
そう、ちょうど干潮の時刻で、海底の岩礁が露になってそこに立つ細波が目に留まったのでした。
気象庁が出している潮位表によると、2月5日の湘南港(江ノ島)の干潮は21:50でプラス10cm。
これから8日の満月にかけて、干潮時の潮位はマイナスになっていきます。
潮位がマイナスになった海は、ふだん海水に覆われている海底の岩や海草なんかがむき出しになって、
遠浅の砂浜は海岸線が50メートル以上も海のほうに遠ざかります。
今回のように潮位10cm程度にまで潮が引く時間帯と帰宅時間とが重なるのは年に数回程度のことなので、
僕は自転車を止めて、しばらくの間その海面に見入っていたのでした。
これがもし夏の晴れた休日の昼間だったりすると近所の親子連れが磯遊びに押しかけてくるところです。
でも今は寒い冬の夜。
ふだん姿を見せない海底が見えたところで、景色がちょっと違うだけで別に何があるというわけではありません。
ただ、これだけ景色が違うと今は潮が目いっぱい引いているということだけは誰の目にも明らかで、
ここまで潮が引くと、これから数時間後には間違いなく、潮がぐんぐんと上がってきます。
しかも今日のように満月の前後、つまり大潮の時ほど、干満の差は激しくなるのです。
そもそも潮の干満というのは、太陽と月と地球の位置関係や地球の自転などによって生じる重力場の差によって
引き起こされわけですが、Wikipediaによると、
「引力は天体からの距離の2乗に反比例するので、その差分で決まる潮汐力は
距離の3乗に反比例する。また、これらの力は天体の質量に比例する」
のだそうです。
…と言われても高校3年の夏に理科系をあきらめて”文転”した僕には、さっぱりわけが分かりません(笑)
でもグラフを見れば一目瞭然です。
潮汐というのは基本的に1日に2回訪れるものなのですが、
このグラフを見ると、それはいくつかの曲線が干渉し合うことによってキレイな曲線を描いていることがよく分かります。
これが天体の引力によるものなんですね。
僕は地動説の時代のことをちょっと想ったりします。
一日に2回、海面が上がったり下がったり。これは周期的に来るようなのだけど、
何が原因なのかがどうもはっきりと分からない。当時の科学者たちは悩んだことでしょう。
経済にも波があると言う人がいます。
60年周期という人もいれば50年、いや40年周期だ、いやいや10年で一回りだという人もいますが、
どの説も確証に至るのは難しいみたいですね。
潮の干満のように、一見複雑に見える自然現象でも天体の動きによってキレイに説明がつくようになったことは、
人類にとって大きな発見でした。
でも経済というのは人間のやること。
まあそう簡単には行かないところがまた面白いのかもしれません…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。 

アメリカとうまく付き合う

早いもので新年も、もう半月あまりが過ぎようとしています。
僕はお正月を地元札幌で過ごした際に、中学生時代の懐かしい友だちと二十数年ぶりに会って来ました。
地元の仲間どうしではたまに集まっていたらしいのですが、
僕だけずっと消息が知られていなかったみたいで、いろいろと矢継ぎ早の質問責めに遭ってしまいました(笑)
“ずっとどこにいた?””仕事は何をやってたんだ?”
“子供は何歳になったんだ?””何で奥さんと別れたんだ?”等々…(笑)
まあそれはいいのですが、消息といえば、僕が帰省を終えて鎌倉の僕のアパートに戻ると、
ここしばらく連絡の取れなかった学生時代の友達M君から久しぶりに年賀状が来ていました。
見ると、2年間のプータロー生活に別れを告げて保険会社に就職したとのこと。
M君と僕はスキー仲間で、当時は冬になると50日以上を雪山で一日中一緒に過ごした仲です。
就職で別れ別れになってからもたまに会っていたのですが、
3年位前に彼が勤めていた会社が倒産したらしいという話を聞いて以来、音信不通となっていました。
僕はそれでずっと心配していたのですけど、
そんなM君からの嬉しい知らせだったので、さっそく連絡を取り、週末に会って話をしてきたんです。
M君はいたって元気そうで、就職先の保険会社のことや、そこで今受けている研修の内容などを
目を輝かせていろいろ話してくれたのでした。
彼が入社した保険会社というのは、この1月に3社が合併して、外資系としては国内最大規模になった会社です。
外資系に限らず保険会社というのは毎月のように新人を採用することは僕も聞いたことがありましたが、
M君の入った会社も1月入社の新人が関東甲信越地区だけで数十人もいて、
しかも合併後の第一期生ということで、入社式がけっこう盛大に行われたそうです。
世田谷の等々力にある、その会社の研修施設で行われた入社式。
新人ひとりひとりに辞令を手渡しするというセレモニーを午前中に終えた後、
午後に行われたオリエンテーションではまず、照明が落とされた大会議場で
いきなりT・レックスの「20th Century Boy」が大音量で流れます。
そして、巨大なスクリーンにはいかにもアメリカンな映像が次々と映し出される…。
バスケットボールやアメリカンフットボールといったいろいろなスポーツの名場面や
チアリーディングだとかサーカスだとかミュージカルのダンスシーンだとか。
合間にはアメリカ人の家族が幸せそうにしている映像が入ったり、
その前面には「栄光」だとか「協調」だとか「歓喜」といったキーワードが次々と大きく映し出されて、
つまりは成功イメージの刷り込みですね。
CMO(営業本部長にあたる人)のスピーチ。
「みなさん、大きな夢を持ちましょう」とオーバーアクションな手振りで訴えかけ、
毎年ハワイで行われる成績優秀者の表彰パーティーの模様をVTRで紹介します。
続いて壇上に上った成績優秀者が、家族と一緒にハワイで表彰されたときの喜びを熱く語ります。
それから、こんなビデオクリップも上映されたそうです。もちろん大音量で。
これにはM君もつい涙してしまったとのこと。たしかに映像作品としては非常に良く出来ていますよね。
(未確認情報ですが、これは「冬ソナ」で有名なユン・ソクホが手がけたものなのだとか)
僕はこの話を聞いて思ったのですけど、確かに新入社員の士気を高めるために
こういう手法はものすごい有効なのはわかりますが、
でもここまでくると、ちょっとずるいというか何というか、
何かこう、しっくりこないものを感じたのでした。
僕は出版社で仕事をしていた頃に、あるネットワークビジネスの大会に取材に行ったことがあります。
そこでは千人規模の大ホールで、やはり音響だとか照明だとかの効果をフルに駆使して
成績優秀者は、ステージの中央にしつらえられた派手なゲートの向こうから
ドライアイスのスモークとともに登場します。それで右手の拳を上げて、
「みなさんにも大成功のチャンスはあるんです!」と叫んで会員のモチベーションを煽るんです。
そんな風景を僕はちょっと思い出して、M君のいる会社も、
売っている商品は保険というれっきとした金融商品とはいえ、
やってることは悪質なネットワークビジネスでよく用いられていた手法とたいして変わらないんじゃないかと。
日常と隔絶された空間で、激情を奮い立たせられたり心の弱いところを突かれたり、
こういう体験をすると、よほど感性の磨り減った人じゃない限りは、
感動して涙も流すでしょうし、身の丈に合わない決意をしたりする人もいるかもしれません。


もちろんそこは保険会社だから、保険という商品を広めることで社会にも貢献するでしょう。
僕らのような個人投資家にしても、保険は資産運用の有効な手段の一つですし。
でも、これはちょっと間違えると、危険な匂いを感じてしまいますね。
人の心を操る力に長けた人が、その力を利用して大勢の人を思いのままに操る…。
鍛え上げられた肉体を持つ格闘家が決して素人には手を上げないように、

強い力を持つ者はその力の使い方を心得ているものですが、

いったいこの人たちには、そういう節度というものがあるのだろうか?
でも考えたら、アメリカは銃社会。いざとなったら銃で威嚇して相手を従わせることを是とする社会です。
そんな国で生まれて発展したのが、このように人の気持ちを弄ぶかのようなやりかただとすると、
そこでは成功のためには人の心を操るのも厭わないということなのかもしれません。
実際、ずっとアメリカが主導してきたのが金融の世界。
アメリカとうまく付き合うことは、この世界で生き延びていく上では必須なのです。
別れ際、僕はM君に、この会社とうまく付き合うように、という言葉を贈りました。
すると彼はこう返してきました。
“もし万が一、仮に俺がトップセールスを達成したとしても、
あのハワイの表彰式の浮かれた映像にだけは絶対に映りたくない”
僕はすこ

たんす預金

年の暮れも、いよいよ押し詰まってまいりました。
クリスマスから年末に向けて、なんだか街中が気ぜわしく
ラストスパートをかけるこの時期。
僕はふだん人の多いところは苦手なのですけど、
多くの人が、わりと目の届くところにある共有するタイムリミットに向けて、
人それぞれに、大切なものとか背負っているものとか、
なにやらかにやらに追われて一気に生活の回転速度を上げる。
そんな景色が楽しめるこの時期の街の雰囲気だけは、けっこう嫌いじゃないです。
来年のクリスマスが今から待ち遠しいです(笑)
さて。年の瀬らしいニュースが目に入ってきました。
  2011年末に人々の財布や企業の金庫の中などに保有されたまま、年を越す日本銀行券
  (お札)の総額は、前年末より2%多い83兆9968億円となり、2年連続で過去最高を更新
  した。日銀が30日発表した。
  日銀が市場に多くのお金を供給する金融緩和策を拡大する一方で、一般家庭では、超低金
  利のため現金を銀行などに預けずに家で保管する「たんす預金」が増えているためとみられる。
  景気の先行きが不透明で、企業が急な出費に備え、手元に置くお金を増やしていることも理
  由のようだ。
  (2011年12月30日22時27分  読売新聞)
すごいですね。”たんす預金”が過去最高を更新、約84兆円とのことです。
84兆円…。
そうです。”兆円”という単位が出てきたら、お札を積み重ねたイメージをするのでした。
僕はこの場でそのことを紹介して以来、”兆円”と聞いた瞬間に、もう無意識のうちに
アタマの中に1万円札を積み上げてできた柱が思い浮かびます。習慣というのは恐ろしいものです。
1万円札は、積み重ねると1億円で厚さ1メートル、1兆円で厚さ1万メートルになりますから
84兆円だと84万メートル。万進法だとピンとこないですね。840kmです。
慎重に計算しなおしても、これは84kmではなくて、840kmなのです。
僕はこのお正月に故郷の札幌へ帰省しますが、羽田から千歳までの直線距離が約820km。
つまり空港から空港までを1万円札でできた柱でまっすぐに結んだとしても、82兆円です。
しかも、これはあくまでも全部1万円札とした場合の話。
現実には、1万円札だけではなくて千円札も相当数が出回っているでしょうから、
そうなると、僕の住む鎌倉から地元の札幌までの直線距離は約880kmも、
十分、”お札の橋”で結ぶことが出来るのではないでしょうか?
そこでちょっと気になったのですが、1万円札と千円札ではどっちが多く出回っているのでしょう?
日銀のサイトでは、現在出回っているお金の、種類別の流通高を調べることができます。
                                                                                        (単位:億円)

まだ11月までのデータしか反映されていませんが、これによりますと、
全部で約84兆円のうち、日銀券(お札)が79.5兆円ほどで、残りの約4.5兆円は貨幣で流通しているとのこと。
それでその79.5兆円の内訳をこの表から読み取りますと、
 1万円札…約72.7兆円
 5千円札…約2.7兆円
 2千円札…約0.2兆円
  千円札…約3.6兆円
ということになります。
これをお札の額面で割ると、枚数が出てきます。
 1万円札…約72.7億枚
 5千円札…約5.4億枚
 2千円札…約1億枚
  千円札…約36億枚
  (合計…約115億枚)
金額としてはもちろん1万円札がダントツに多いですが、
枚数でみてもやはり1万円札が多く、次に、その約半分ほどが千円札なんですね。
ということは、84兆円が全部1万円札だとしたら84億枚(840km)で済みますが、
実際に今流通しているお札を使って積み重ねていくとしたら、115億枚(1150km)ということになり、
鎌倉からだと札幌を通り越えて稚内あたりまで届いてしまいます。
まあどっちにしても、すごい量のお札です。
さらに、これに4.5兆円分の貨幣も加えたものが、いま日本で流通しているすべてのお金、
ということになりますが、だんだんどうでもよくなってきたので、今回は紙幣までにしておきます。
貨幣がどのくらい出回っているかを詳しく知りたい方は(そう多くはいないとは思いますが)
日銀のサイトへどうぞ(笑)
もちろんたんす預金ではお金は決して殖えません。
しかも、もし仮に世の中が急激にインフレへと転換してしまった場合は、
たんす預金だと逆に価値がどんどん減っていってしまうということだけは、
頭の隅に置いておいたほうがいいでしょう。
とはいっても、ニュース記事にもあるとおり、これは超低金利時代という世相をよく表した結果です。
インフレもそうですが僕らは目に見えないリスクを多く抱えているわけで、
目に見えないリスクを気にし始めたらキリがないというのも、ひとつの考え方かもしれません。
少なくとも、盗まれたり、燃えたり、流されたりといった現実的なリスクというのは
その多くは頑張れば自分で何とかコントロールできそうな気がします。


運用、というと殖やすことを前提に考えてしまいがちですが、
目に見えて手触りのあるものを手元に置いておいて、少なくとも”減らない”という安心感を得る。
これもまあ、運用方法のひとつということなのでしょう。
…ことし最後の更新も、”お札の厚さネタ”で締め括らせていただきました。
それでは皆さま、よいお年をお迎えくださいませ…。
※当ブログの目的は、投資に関する話
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国策も、味方に

日本の食料自給率が他の先進国と比較して異様に低いという話を、先日ここでしました。
穀物ファンドの運用を手がけるファンドマネージャーのTさんから聞いてきた話です。

関連して、Tさんはアメリカでここ数十年の間に起きたことについても触れられていて、
これが投資をする上でもなかなか興味深いものがありましたので、もう少しご紹介します。
アメリカでは1973年に大規模な農業法の改正が行われて以降、
国としての食糧事情がガラリと変わりました。
この年にトウモロコシの生産農家に大規模な助成金を出し始めたことが、
その後、トウモロコシ価格の急上昇をもたらしてアメリカ人全体の食生活を変え、
ひいてはそれが今現在の僕ら日本人の生活にまで、大きく影を落としているとのこと。
アメリカのトウモロコシ畑というと、地平線まで見えそうな広大な土地を思い浮かべますよね。
巨大なトラクターや飛行機を使って豪快にやるのがアメリカの農業、そんなイメージですが、
実はそれはこのときから始まったのだそうです。
これはシカゴのトウモロコシ相場の長期チャートです。
ちょうど1973年を境にして相場は急上昇、その後激しく動くようになったのがよくわかります。
この政策の根底には、”世界を支配するには、まず人々の胃袋を支配することだ”という考え方がありました。
国が富むということは、食料を自前で満たすことができてこそ。
そうした考えをもとに、アメリカは莫大な量のトウモロコシを備蓄することに成功して、
一方ではそのトウモロコシをありとあらゆるものに活用する研究を進めたのだそうです。
その結果、いまスーパーに並んでいるすべての食品のうち何と90%以上のものに
トウモロコシ由来の成分が入っているらしいのですがご存知でしたでしょうか?
多くの清涼飲料水のラベルに真っ先に書いてある”果糖ブドウ糖液糖”というのは、
コーンスターチから作られますし、あらゆる甘味料はトウモロコシを原料にして作られています。
スナック菓子などの原料としてもトウモロコシは最もポピュラーですよね。
その他にもトルティーヤやタコスなどの生地にするコーンミールなどもありますし、
もっと言うと、僕らが食べている牛肉や豚肉や鶏肉までもが、トウモロコシ由来なのだそうです。
というのも、たとえば本来は干草などを食べて育つはずの牛や豚にトウモロコシを原料とした配合飼料を食べさせて、
そうして育った肉が日本にも輸入されてスーパーで売られているというわけです。
結果としてアメリカ人の食生活はどんどん脂肪や糖分を過剰に摂取する傾向が強まり、
肥満や糖尿病が社会問題化してしまいます。
最近になって、その背景にあったのがこのトウモロコシの生産拡大だったという見方が強まって、
この政策の功罪が問われるようになったということです。
この政策は、国民の健康という観点からするとヒドいものがあったかもしれませんが、
国力を増強する戦略という見方をするなら、確かに今のアメリカの覇権を支える
ひとつの大きな要因となったことは否めないでしょう。
“胃袋を支配する者が、世界を支配する”というわけですね。
政策の是非については議論のあるところだと思いますがそれは政治家や評論家に任せるとして、
僕ら投資家としては、たとえば穀物価格を取ってみても国策ひとつでこれだけ大きく影響を受けることがあるということを、
知っておいていいと思います。
そしてもちろん、もしチャンスがあれば、これを味方につけない手はありません。
年内も押し詰まってきて、そろそろ各分野での来年の展望などが語られるようになりました。
来年、野田政権ではどのような政策が行われて、それが投資環境にどんな影響を及ぼすのか、注目していきたいですね…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
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罪と罰…

十数年にもわたる損失隠しの実態が明らかになり、
オリンパスの経営をめぐるドタバタが続いています。
決算報告書の訂正版を期限である12月14までに提出したことによって上場廃止はひとまず回避されはしたものの、
東証の判断しだいでは、まだどうなるかわからない状態です。
きのう(15日)開かれた高山社長の記者会見では、過去の決算について配当可能利益が不足していたことなどが明かされて、
株価は前日比273円(20.77%)安という大幅安となりました。
経営陣の刷新がどうなるか、注目されるところですね。
個人的には、ウッドフォード元社長にがんばって欲しいと思っていますが…。
オリンパスはご存知のとおり消化器系内視鏡のトップメーカー。
世界シェア75%ということですからその市場支配力はダントツです。
国内では独占に近いとされる優位性にモノを言わせて、値引きをしないことでも有名だそうですね。
内視鏡で治療を行えば行うほど、オリンパスだけが儲かるという構図も指摘されていました。
そうして得られた収益が、バブルの頃に出した巨額の損失の埋め合わせに使われていたなんて、
怒り心頭という先生もいらっしゃるのではないでしょうか?
損失を「飛ばす」ため、リヒテンシュタインだとかケイマンだとかわけのわからない海外のファンドに資金が流れていたり、
おそらくは、そうした悪知恵を提供した一握りの幹部の懐にも入っていたでしょうし、
それもこれも、元をたどると患者の治療費や僕らの保険料から出ていることを考えると、
なんともやりきれない気持ちになります。
先週(6日)、第三者委員会がまとめた報告書によって、一連の損失隠しの全貌が明らかにされました。
その手口は歴代3人の社長やそれを取り巻く一部の幹部だけが認識していて、
「経営の中心が腐っていた」とのこと。
企業ぐるみではないということですから、現場で働く社員の方には罪はありません。
逆にれまで会社の売上のために一生懸命頑張ってきたのに、これからは非難の矢面に立たされるわけで、
むしろ多くの社員は一番目の被害者と言うべきかもしれないですね。
何が行われていたのか、第三者委員会が作成した資料を見てみましょう。
「損失分離スキーム」と「損失解消スキーム」、二つのフローチャートがあります。
もっとも、これを見ただけでは何がなんだかだかさっぱりわかりませんが…。
ごくごくかいつまんで言うと、話はバブル前夜の1985年までさかのぼり、
当時の下山社長が財テクで大損をしたところから始まります。額にして約1177億円。
それで、その巨額の損を簿外に「飛ばす」方策が、図の「損失分離スキーム」です。
バレると会社の信用が落ちるし株価は下がるということで、
シンガポール、ヨーロッパ、国内のそれぞれの受け皿ファンドへと、損失が「飛ばされ」たのですね。
それらの損を穴埋めするのが、もう1枚の図で示された「損失解消スキーム」。
新規事業で国内のベンチャー企業の株式取得のために大金を投じたというのが、彼らが描いたシナリオです。
と言われても、これらの図を見ても、とにかく複雑だということ以外は、やっぱりよくわかりませんが(笑)
一連の隠蔽工作はトップとそれを取り巻く数名だけの極秘事項で、しかも最優先課題だったとのこと。
彼らにとってこの十数年間は、なんとスリリングな時間だったことでしょう。
前社長の菊川氏によって発せられたナマナマしい言葉が新聞記事にも書いてありました。
「どうだ、全部(損を)消せるか」
「これで終わるといいな」
さらに想像を膨らませちゃいますと、銀座の超高級料亭の一室で、ぷりぷりの車海老の刺身などをつまみつつ、
「これですべてキレイになりますよ社長。ご安心ください」
なんて言ってたのでしょうか。そして大吟醸でもすすりながら、
「おぬしもワルよのう」
「いえいえ、社長ほどではございませぬ」
「ふぉーっふぉっふぉっふぉ」
みたいなやりとりが交わされていたりして…。
大損させられた投資家などは怒りが収まらないのではないでしょうか?
オリンパスの株主は、日本生命や三菱東京UFJなどの金融法人が上位を占めています。
筆頭株主の日生はすでに11月の時点で大量に売却していて、
3月末に8.26%だった持株比率を、いまは5.11%にまで落としています。
損失規模までは公表されていませんが、おそらく億単位になっていることは間違いないのではないかと。
それこそ、巨額の損失…。
こういう事件が起きると、株への投資は何を信じていいのかわからなくなってしまいますね。
これだけ大きなウソが潜んでいるとなると、それは株式市場そのものが持つ本質的なリスクと考えるしかなく、
個人投資家としてはなす術がありません。株はギャンブルだと言われても仕方ないです。
このように、オリンパス社員をはじめ多くの投資家や市場参加者全体を欺き続けた罪は、僕は小さくないと思います。
オリンパスの上場維持か廃止かを決める東証の判断は、
それに対する答えということになるのでしょう…。
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