国策も、味方に

日本の食料自給率が他の先進国と比較して異様に低いという話を、先日ここでしました。
穀物ファンドの運用を手がけるファンドマネージャーのTさんから聞いてきた話です。

関連して、Tさんはアメリカでここ数十年の間に起きたことについても触れられていて、
これが投資をする上でもなかなか興味深いものがありましたので、もう少しご紹介します。
アメリカでは1973年に大規模な農業法の改正が行われて以降、
国としての食糧事情がガラリと変わりました。
この年にトウモロコシの生産農家に大規模な助成金を出し始めたことが、
その後、トウモロコシ価格の急上昇をもたらしてアメリカ人全体の食生活を変え、
ひいてはそれが今現在の僕ら日本人の生活にまで、大きく影を落としているとのこと。
アメリカのトウモロコシ畑というと、地平線まで見えそうな広大な土地を思い浮かべますよね。
巨大なトラクターや飛行機を使って豪快にやるのがアメリカの農業、そんなイメージですが、
実はそれはこのときから始まったのだそうです。
これはシカゴのトウモロコシ相場の長期チャートです。
ちょうど1973年を境にして相場は急上昇、その後激しく動くようになったのがよくわかります。
この政策の根底には、”世界を支配するには、まず人々の胃袋を支配することだ”という考え方がありました。
国が富むということは、食料を自前で満たすことができてこそ。
そうした考えをもとに、アメリカは莫大な量のトウモロコシを備蓄することに成功して、
一方ではそのトウモロコシをありとあらゆるものに活用する研究を進めたのだそうです。
その結果、いまスーパーに並んでいるすべての食品のうち何と90%以上のものに
トウモロコシ由来の成分が入っているらしいのですがご存知でしたでしょうか?
多くの清涼飲料水のラベルに真っ先に書いてある”果糖ブドウ糖液糖”というのは、
コーンスターチから作られますし、あらゆる甘味料はトウモロコシを原料にして作られています。
スナック菓子などの原料としてもトウモロコシは最もポピュラーですよね。
その他にもトルティーヤやタコスなどの生地にするコーンミールなどもありますし、
もっと言うと、僕らが食べている牛肉や豚肉や鶏肉までもが、トウモロコシ由来なのだそうです。
というのも、たとえば本来は干草などを食べて育つはずの牛や豚にトウモロコシを原料とした配合飼料を食べさせて、
そうして育った肉が日本にも輸入されてスーパーで売られているというわけです。
結果としてアメリカ人の食生活はどんどん脂肪や糖分を過剰に摂取する傾向が強まり、
肥満や糖尿病が社会問題化してしまいます。
最近になって、その背景にあったのがこのトウモロコシの生産拡大だったという見方が強まって、
この政策の功罪が問われるようになったということです。
この政策は、国民の健康という観点からするとヒドいものがあったかもしれませんが、
国力を増強する戦略という見方をするなら、確かに今のアメリカの覇権を支える
ひとつの大きな要因となったことは否めないでしょう。
“胃袋を支配する者が、世界を支配する”というわけですね。
政策の是非については議論のあるところだと思いますがそれは政治家や評論家に任せるとして、
僕ら投資家としては、たとえば穀物価格を取ってみても国策ひとつでこれだけ大きく影響を受けることがあるということを、
知っておいていいと思います。
そしてもちろん、もしチャンスがあれば、これを味方につけない手はありません。
年内も押し詰まってきて、そろそろ各分野での来年の展望などが語られるようになりました。
来年、野田政権ではどのような政策が行われて、それが投資環境にどんな影響を及ぼすのか、注目していきたいですね…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
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