”1月効果”

いよいよ週明けからは、新年も本格始動という感じですね。
投資家の間で”1月効果”と言われている現象がいくつかあるのですが、
とくに株価に関しては、毎年1月は大型株や中型株よりも小型株が上昇しやすい傾向があることが知られていて、
そのことを指して1月効果(ジャニュアリー・エフェクト)という言い方がされています。
小型株というのは発行済み株式数が6000万株未満の銘柄のことで、
たとえばジャスダック市場、東証マザーズ、大証ヘラクレスなどの新興市場に上場する
ベンチャー企業などを思い浮かべていただけたらいいのではないかと思います。
1月にベンチャー企業の株を買っておけば株価は上がる可能性が高い…、
もし本当にそうなら、年の初めだし縁起もいいし、景気づけにひとつここらで、
ベンチャーに夢を託してみようか…なんて、そんなウマい話はあるのでしょうか?
そもそも1月効果というのは、米国の株式市場で
70年あまりの期間にわたる大型株と小型株の値動きを研究をした末に導き出された経験則だそうです。
ペンシルベニア大学ウォートン・スクール教授のジェレミー・シーゲル氏の著書『株式投資』では、
1925年から2001年までの間、S&P500指数の1月の平均利回りを調べたところ1.7%であったのに対して、
小型株だけの平均利回りを計算すると、なんと6.5%だったということが紹介されています。
これがいろいろ調べると1929年の世界大恐慌のときにも当てはまり、しかも日本の株式市場にも当てはまるというのですから
ちょっと驚きですね。本当にそうなのでしょうか?
最近の日経平均とジャスダック指数のデータを集めて、比較してみました。
2004年から2010年までのそれぞれの年について、1月の始値と終値を一覧にしたのが下表で、
それをグラフにして比べたのがその下の図です。
青が日経平均で赤がジャスダック指数です。
タテ軸の目盛は日経平均に合わせてあります。ジャスダック指数のほうは比較しやすいように数値を100倍にしてあります。
見ると、総じて日経平均が上昇している年にはジャスダック指数はそれ以上の急角度で上昇していて、
逆に2005年や2010年のように、日経平均が下落している時でもジャスダック指数が上昇している年もあります。
2008年、2009年は日経平均とジャスダック指数が揃って下落していますが、
その度合いはジャスダック指数のほうがずいぶん緩やかなことが見て取れますね。
唯一日経平均のほうが上昇の度合が強い2006年という年は、まさに1月にライブドアに家宅捜索が入ったときでした。
なるほど、ジャスダック銘柄が買われないのもうなずけます。
つまり、こうしてみると見事に”1月効果”が現れていることになるわけです。
なかなか興味深い現象ではないでしょうか。
でもなぜ1月は小型株が上昇しやすいのでしょう?
シーゲル教授は、「確かなことは誰にもわからない」としつつも、いくつかの仮説を立てています。
たとえば個人投資家は機関投資家に比べて小型株を相対的に多く保有している傾向にありますが、
個人投資家はより税金に神経質なので12月には節税目的により売られやすく、その反動で1月には買われやすくなる…。
でも日本では1989年まで個人投資家にはキャピタルゲイン税がかからなかったのに、
それでも1月効果は存在したそうですから、税制だけが要因ではないようです。
もうひとつの仮説は、個人投資家が年末にボーナスや節税対策で手にした資金を、
年末年始の間だけ寝かせてから1月の第1週に投資を行うのではないか、という考え方です。
心情的には、僕はこの仮説のほうがぴったりくるような気がします。
いずれにしても、合理的な説明には至っていないところがまた
1月効果の面白いところかもしれないですね。
このように、はっきりとした理論的根拠をもつわけではないのによく当たる経験則のことを、
アノマリー(anomaly:変則、例外、異例)と呼ぶそうです。
アノマリーは1月効果の他にも曜日の効果や祝日の効果、月単位のものから10年単位のものまで
いろいろありますので、株式投資をする際には研究してみるのも手かもしれませんね…。

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