ヒット商品の人気について考えてみる

毎月分配型投資信託が人気のようです。
なかでも野村グローバル・ハイ・イールド債券投信(資源国通貨建て)が
去年1年間に個別のファンドが集めた資金としては最大の、1兆1500億円という
ものすごい人気の高まりを示しています。
先日(1/14)、日経新聞が1面トップで話題にしていましたので
もしかしたら記事をご覧になった先生もいらっしゃるのではないでしょうか?
野村グローバル・ハイ・イールド債券投信の純資産総額は2010年12末時点で2位。
“国民的投信”とも言われたグローバル・ソブリン・オープンに次ぐ規模です。
グローバル・ソブリン・オープンといえば、ピーク時は純資産総額が5兆7000億円、
165万人が購入する”お化け投信”とか言われていましたが、
でもその”お化け”を脅かすほどの勢いで人気が高まっているのがこの
野村グローバル・ハイ・イールド債券投信というわけです。
(”投信資料館より)
これは去年の12月末時点でのランキングですが、
それにしてもご覧の通り、純資産総額トップ10はすべて
(名称に銘打っていないフィデリティ・USリート・ファンドBも含めて)
毎月分配型または毎月決算型ということになります。
毎月分配型投資信託とは、その名の通り投資家が毎月分配金を受け取れるファンドで、
わかりやすく言うと、たとえば500万円でファンドを購入すると、
毎月2万円とか3万円とかのお小遣いがもらえるといった感じですね。
(毎月決算型というのは、その分配金を受け取る代わりに再投資することも可能です)
でも僕が思うには、毎月現金が入ってくることによる安心感があるので、リスクが見えにくくなる。
長期間の運用の結果がどうなるかということには、あまり関心が向かなくなるのではないでしょうか。
しかもこの毎月分配型でもらえる分配金というのは、
いわば自分のお金を取り崩して受け取っているようなものですから、
せっかく複利で増えた分をみすみす使ってしまうことになりますよね。
つまり複利の効果が十分生かせないんです。もったいないと思いませんか?
曽呂利新左衛門の米の倍増しではないですが、やっぱり投資信託は、
複利のメリットを最大限に生かしてこそ、と僕なんかは考えてしまいます。
それでも分配型に人気が集まるのは、なんというか、日本人のメンタリティとでもいうべきものでしょうか。
資産を運用するという感覚ではなく、年金代わりに一定の収入が入れば良し、
という人がそれだけたくさんいるということなんですね。
こういった人気ファンドは、特に高齢者が銀行や郵便局などで購入するケースが多いと聞きます。
おそらくは、購入するときの決め手になる理由はというと、
・他の金融商品よりも利回りが高い(日経新聞の記事によれば公募投信の分配金の平均利回りは7.4%)
・純資産額が莫大(なにしろ1兆円以上のおカネが集まっているのだからとりあえず安心)
・基準価額が安定している、または右肩上がり(チャートを見れば一目瞭然)
僕の勝手な想像ですが、売るほうも買うほうも、だいたいこの程度で決める人がけっこういるのではないでしょうか?
ちょっと心配になるのは、その人たちがこの商品のリスクについてどの程度理解しているのか?という点です。
お人好しの老夫婦が、大切に貯めてきた資産を、まあ難しいことはよく分からないけど
担当者も良い人みたいだし、大きい会社みたいだし、毎月何万円かもらえるならそれもいいわね、
という感じでぽーんと購入を決めてしまう場面を、僕はどうしても想像してしまいます。
しかも、グローバル・ソブリン・オープンが徐々に純資産総額を減らしている一方で
野村グローバル・ハイ・イールド債券投信のほうは破竹の勢いで伸びているという事実。
ちょうど1か月前にこのブログで投信のランキングをチェックしたときと比べると、
1位と2位の順位こそ変わっていませんが、両者の勢いの差は歴然としています。
でもハイ・イールド債というのは、つまりジャンク債のことですよね。
利回りを追求するために、よりリスクの高い債券にどんどん資金が流れていく。
本当に大丈夫なんでしょうか…?
かつて一世を風靡した金融商品で、後々トラブルが相次いだ”L字型保険”というのがありましたが、
僕はなんだかそのことを思い出します。
L字型保険というのはバブル時代までの大手生命保険会社の主力商品、
正式には”定期保険特約付終身保険”といわれるものです。
・定期保険の部分で、子育てや住宅購入などいちばんお金がかかる時期の死亡保障を大きくとれる
・高額商品である終身保険の要素を備えている割には、掛け金が比較的、安い
こう聞くと、たしかに理に適っている感じはしますよね。
だから保険会社にとっては、ボロ儲けできる画期的な商品だったとも聞きます。
でも大ヒット商品といえども、万人にとって良いということはありえないわけで、
肝心なところの説明が十分されないで、外交員のノルマ消化のために
強引に売られていたケースがかなりあったわけです。
いざ一家の主が死亡したときに、遺族が5000万円もらえると思っていたところ
200万円しか受け取れなかった、といった泣くに泣けない例があちこちで起きたことを
耳にされた方も多いことでしょう。
商品自体に罪はありませんが、売り方や買い方が適切でなかったり、
買うべきでないような人が買ってしまったりすると、
罪もない人を不幸にすることになってしまうのが、金融商品の怖いところです。
関係ないといえばぜんぜん関係ないですけど、新年早々、
国際リード、夢大陸、ベストパートナーと、投資詐欺のニュースが相次いでいますね。
ぜんぜん関係ないとは言いながらも、
ハイ・イールド債を組み込んだファンドを購入するお人好