節電の真っ只中ですが、電力の料金設定制度である「総括原価方式」をご存知でしょうか?
わたしは雑誌を読んで最近知りましたが、この制度があるがために、
各電力会社が、あえて莫大なコストがかかる原子力発電を推進してきたとのことです。
その計算式は以下の内容です。
「電力料金」=「総原価」+「電飾会社の利潤」
「電力会社の利潤」=「総原価」×「報酬率」 ※2011年6月3日時点の「報酬率」は3.05%
要するに、電力料金は「総原価」と「報酬率」によって決まります。
「総原価」に含まれるものは、特性固定資産、建設中の資産、核燃料資産、特定投資、運転資本等。
「報酬率」は資源エネルギー庁が毎年査定し、決まります。
当然、電力料金を下げるためには、「総原価」と「報酬率」を圧縮する必要があります。
そのため、「報酬率」に関しては、かつて8%の時代もあったそうですが、徐々に引き下げられ、
今では3%強にまで落ちています。
しかし、電力料金は過去と比較して、「報酬率」の引き下げほど下がっておりません。
また、「電力会社の利潤」に関しては、下がるどころか上がっています。
なぜなのか??
そのトリックは、上記の式にあります。
電力料金にしても、電力会社の利潤にしても、「総原価」そのものの存在が大きいのですが、
それを下げるインセンティブが電力会社には無いのです。
むしろ、電力会社の利潤を上げるためには、「総原価」を増やすインセンティブがあるのです。
「電力会社の利潤」=「総原価」×「報酬率」
そうです。
たとえ「報酬率」を下げられても「総原価」を上げることで電力会社が潤う図式です。
あらゆる発電方式の内、原子力発電所の建設コストが高いことは言うまでもありません。
例えば3千億円の原発を1基増設すると、報酬率が3%ならば、年間90億円の利潤が得られるのです。
そうなると、電力会社は原発を増設した方が儲かるのです。
これってどう考えてもおかしいですよね????
ちなみに、日本の電気料金はOECD加盟国30か国の中で、8番目に高いと試算されています。
(単位:USドル/kWh 引用元:Scrap Japan)
話を元に戻すと、原発が増設された背景には、電力会社が独占企業だということがあります。
通常、常に競争環境に置かれた一般企業において、コストを増やそうという発想はありません。
コストは削減するものです。
また、今までは原発の発電コストは安いと言われていましたが、これもまた覆されています。
電気事業連合会の試算では、原子力の発電コストは石油の火力発電の半分だと言われていましたが、
営業コストや国が負担したコストなどを入れると、火力よりも原子力の方が高くなるのです。
(詳細な説明は割愛しますが、立命館大学の大島教授が検証した結果を元にしています)
さらに、電力会社の原発増設に歯止めがかからなかった理由は、様々な利権構造があるからです。
例えば、必ず回収できる投資に対して銀行はいくらでもお金を貸します。
また、原発建設の誘致には、土地の買収や住民に対する補償などで族議員が絡んできます。
そういった原発推進シンジケートが完成してしまったため、
誰もこの流れを止めることができなかったということになります。
そういえば、菅首相の退陣圧力が突然高まったのは、原発廃止を唱え始めた頃からです。
しかも、今では経団連の会長までが「菅退陣」を口にしています。
たしかに菅首相の動きは悪いですが、原発を廃止されると都合の悪い人達が
菅下しに動いているのではないかと密かに思っています。
そもそも、私自身は原発を完全に廃止する必要はないと思っていましたが、
上記のデータや利権構造が明るみに出るにつれて、原発の必要性に疑問符がついてきました。
今すぐに廃止することは極端ですが、少なくとも利権構造を破壊してもらいたいものです。
ここは、空気を読めない「菅首相」の出番ではないでしょうか?