少し前のニュースで、「春日電機」という会社が話題になりました。
その理由は、ある日突然会社を乗っ取られ、会社の資産を勝手に流用され、
挙句の果てに会社自体が潰れてしまうという悲惨な事件に発展したからです。
ニュースは以下の内容です。
「春日電機元社長、取締役会経ず4億5千万円融資」 (読売新聞)
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東証2部に上場していた電気部品製造会社「春日電機」(本社・東京)の不正融資事件で、同社元社長
の篠原猛容疑者(53)(特別背任容疑で逮捕)は、自分の実質経営する会社に無担保で融資したとさ
れる計5億5000万円のうち4億5000万円について、同社の取締役会の議決を経ずに融資を実行
していたことが捜査関係者への取材でわかった。警視庁は篠原容疑者が違法性を認識していたとみて、
融資の経緯を詳しく調べている。
同庁幹部によると、篠原容疑者や春日電機元役員の大槻洋容疑者(42)(同容疑で逮捕)ら3人は
2008年6~7月、回収の見込みがないのに、篠原、大槻両容疑者が経営する会社「アインテスラ」
に5回にわたって計5億5000万円を無担保で融資したとされる。
春日電機では3000万円以上の融資を行う場合、取締役会の議決が必要と規定されており、篠原容疑
者らはアイン社に計1億円を貸し付けた最初の3回分の融資については、取締役会で議決を行った。
しかし、その後、2億円と2億5000万円を追加融資した際には、正規の取締役会を開かず、勝手に
春日電機とアイン社との間の金銭消費貸借契約書を作成していたという。
警視庁は、篠原容疑者らが取締役会での反対を恐れて、独断で追加融資を行ったとみている。
篠原容疑者は今月9日、読売新聞の取材に応じ、「追加融資については、取締役会は開いたが、監査役
を呼ばず、議事録も残さなかった」と説明している。(2011年1月13日03時05分 読売新聞)
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そもそも、「会社の乗っ取り」とはそんな簡単にできてしまうものなのでしょうか?
以前有名になった事件と言えば「ライブドアのニッポン放送買収事件」です。
このとき、フジサンケイグループはフジテレビを中心に運営されていましたが、
フジテレビの筆頭株主は依然として株価の安いニッポン放送のまま放置されいたため、
その資本のねじれ現象を巧みに突いたライブドアが買収を仕掛けた事件でした。
これらの買収事件ですが、一言でいってしまうと、買収される会社にも責任があるのです。
上場されている企業を乗っ取ろうとする際、株式の公開買い付け(TOB)をするのが一般的です。
「現在の経営陣に任せたい」と考える株主が多ければ、TOBは成立しません。
また、少なくとも1/3以上の株式を握らない限り、経営の実権を握ることはできません。
今回の春日電機の場合、乗っ取り側は20%弱の株式しか買い付けしていません。
しかし、まずは筆頭株主として取締役会のメンバーに入り込み、株主総会で修正動議が認められ、
その結果、創業家が退任させられ乗っ取り屋のボス「篠原氏」が代表に就任するという流れがあり、
「篠原氏」が強引に会社を乗っ取ったという訳ではないのです。
ということは、他の株主も「乗っ取り屋」に一度は賛成した訳です。
おそらく「篠原氏」は天性の詐欺師まがいの口ぶりで、株主や組合を言いくるめたのでしょう。
その「篠原氏」が会社のお金を私的に流用し、最終的には会社が潰れてしまうのですから、
少なくとも「篠原氏」の代表就任に賛成した株主にも責任があるといえます。
とはいえ、「春日電機」は1945年創業の歴史のある会社です。
東証二部に上場され、売上も60億そこそこあり、従業員も連結で300名ほどいました。
そんな会社がいとも簡単に乗っ取られ、簡単に潰れてしまうとは悲しい現実です。
株式上場で巨額の富を築くことも重要かもしれませんが、
買収リスクや株主からの横やりリスクを考えると、非上場の方が良いかもしれません。
日本を代表する企業でも、「サントリー」「竹中工務店」「ヤンマー」「YKK」などは非上場ですからね。
「いつかは上場」なんていう甘い言葉に惑わされずに、コツコツやるのが良いと思います。