最近最も気になる言葉は「モラルハザード」です。
「モラルハザード」を和訳すると「倫理の欠如」ですが、
最近はこれに当てはまるケースが様々な分野で散見されます。
モラルハザードが起きる原因は、人間が本来持っている“性”からきていると思われます。
人間は損失が限定される(もしくは損失が無い)と、無駄遣いをしてしまう生き物です。
もしくは、報酬と損失を比較した際、明らかに損失リスクの方が少ない場合、
報酬を最大化するために、リスクを過大に取ってしまう生き物なのです。
前者の例(損失が限定)を挙げると、医療保険や自動車保険等の保険分野に関わるものがあります。
日本の医療保険は、本人か負担するか国が負担するかの2通りしかありません。
自動車保険は、本人が負担するか保険会社が負担するかの2通りです。
いずれも本人が少しは負担するため、不要不急の無駄遣いは多少なりとも抑えられています。
しかし、高齢者や生活保護者や乳幼児には医療費を負担する必要がないため、
大した病気じゃなくても、ついつい病院に行ってしまうのではないでしょうか?
我が家も「乳幼児医療助成制度」の対象世帯なので、子供の医療費は自己負担がありません。
そのため、子供がちょっと調子悪くなると、ついつい病院に連れていってしまいます。
この行動の裏側に潜む考え方は、「自己負担が無いなら取りあえず診せておこう」です。
次に、報酬と損失のリスクがアンバランスの場合に起こるモラルハザードは、
AIJ投資顧問のようなケースや、外資系金融企業の高インセンティブ制度に関わるものです。
AIJの浅川社長は年俸7千万円を貰っていたそうですが、巨額の年金資産を消失させても、
個人資産を没収されるリスクはありませんでした。
外資系金融企業の社員は、高いインセンティブを設定されているケースが多く、
その大半は年度ごとの業績に比例して支払われます。
そのため、単年度の業績を上げることで高額報酬を得て、次年度が赤字だったとしても、
前年度の報酬を返す必要はありません。
そうなると、中長期的なことなど考えずに、短期的な業績を上げることだけを考えます。
このインセンティブ制度の弊害は、日本企業でも往々にしてあることです。
売上をインセンティブの対象にしている営業マンは、インセンティブを貰うために、
嘘の売上を会社に報告し、後々になって売上をキャンセルするなど、ズルをします。
適度なインセンティブは効果を発揮しますが、過度なインセンティブは会社を潰します。
この「モラルハザード」という考え方は、あらゆる場面で遭遇するのですが、
要するに、リスクとリターンのバランスが崩れているから起こるのです。
「人間は易きに流れる生き物」なのだから、なんらかの形で歯止めをかける必要があります。
今話題の生活保護にしても、受給するリスクが全く無いのはどうかと思います。
正しい受給なら問題ありませんが、不正受給に対する罰則をもっと強化するなど、
負のインセンティブを設ける必要があると思います。(電車のキセルでも3倍返しです。)
ちなみに、夫婦間にもモラルハザードは存在すると思います。
夫が仕事を理由に家事や育児に協力的じゃなくなるとか、
妻が容姿を気にしなくなるのは「モラルハザード」以外の何物でもありません。
この場合は、多少の問題が起こったとしても離婚には至らないという安心感により、
損失リスクが制限されていることが原因です。
そして、夫婦間がお互いに教授しているサービス(報酬)が当たり前になっていることが問題です。
この報酬と損失のアンバランスが生み出す状況は
降格の無い一部上場企業のサラリーマンが管理職になった途端に手を抜くケースに似ています。
しかし、今やパナソニックのような大企業のサラリーマンがリストラに合う世の中です。
そのため、安定した夫婦間でもお互いにリストラされない努力が必要だと思います。
では、それらを回避するためにどうしたら良いのか?
それは、絶妙なインセンティブ設計することだと思います。
ちなみに、我が家の私に対するインセンティブ(負のインセンティブ)は下記内容です。
・飲み会1回につき5千円(仕事は除く)
・外泊一泊二日につき1万円(仕事での宿泊を含む)
・外泊二泊三日につき3万円(仕事での宿泊を含む)
※上記金額は妻の機嫌により変動します。
以上、私が早く家に帰るインセンティブでした(涙)