医師の職場環境

「医師の職場環境」を巡る悪い噂話は絶えることがありませんが、

実際にいままでお会いした方の中にも不遇な先生は沢山いました。

そして、不遇なケースのほとんどは医局絡みです。

 

医局は専門知識を得るためには非常に良い制度だと思うのですが、

旧態依然とした体育会系の文化なので、法律を守られていないケースも多いようです。

 

しかし、実際にその立場にある先生達ご自身は、それほど不遇という認識がないことも事実です。

 

例えば、医師免許取得後10年以上経っている医師が、

3日は医局から指定された病院にて非常勤として勤務しており、

その時給が2千円程度だというケース。

(最初にこの話を聞いたときは看護師の時給だと思いました・・・)

 

当然、それだけの収入では厳しいため、

残りの二日を別の医療機関でアルバイトすることになりますが、

ご本人はそれほど気にされていませんでした。

 

 

また、バイト制限により医局から勤務先を指定されているケースもあります。

しかも、そのバイト代は、一般的なケースより23割ほど安いのです。

わたしのそれまでの認識では、医局派遣のバイト代の方が高いと思っていたので、

その話を聞いたときは驚きでした。

 

他には、無給医局員から有給医局員に昇進した結果、給与が下がったなんて話も聞きます。

有給とはいっても給与額が少なく、拘束時間は長くなるため、

現実的には無給医局員のときのほうが自由度が高く、給与も多かったというケースです。

 

 

先生達は専門知識を学ぶためには、お金には拘らないと仰っていますが、

医療機関側(医局側)は、そういう先生達の善意を利用している気がします。

少なくとも、労働基準法に定められている最低限のルールは守ってほしいものです。

 

 

労働基準法とは一般のサラリーマンだけでなく、勤務医にも適用されます。

民間病院はもちろん、公立病院や独立行政法人にも適用されますので、

先生達も最低限の内容は把握しておいた方が良いと思います。

 

 

まず、労働基準法には労働時間に関する制度が記載されています。

・第32条:1週間で40時間以上、1日で8時間以上労働させてはならない。

・第34条:労働時間が6時間を超える場合は最低45分、8時間を超える場合には最低1時間の

      休憩時間を与えなければならない。

・第35条:少なくとも週1回の休日、又は4週間で4日以上の休日を与えなければならない。

・第36条:使用者が労働者代表と書面による協定を締結し、これを労働基準監督署長に

      届け出た場合には、法定労働時間又は法定休日の規制枠を超えて、 

      労働者に時間外労働を行わせ、又は休日に労働させることができる。

 

 

上記の第36条は、これがいわゆる36(サブロク)協定」です。 

 

 

また、上記の時間外労働や休日労働は、使用者は割増賃金を支払わなければなりません。

平日の22時以降の残業においては、通常賃金の25分増し以上支払う義務があり、

休日出勤においては、通常賃金の35分増し以上の割増賃金を支払わなければなりません。

更に、深夜労働(225)も、通常賃金の2 5分増し以上の割増賃金が発生します。

                                (労働基準法第37条)

 

有給休暇に関してもあまり知られていませんが、下記の記載があります。

6ヶ月間以上の継続勤務と所定労働日の8割以上の出勤の要件を満たした労働者には、

勤続年数に応じて10日から20日の年次有給休暇を与えなければならない。

                                (労働基準法39条)

【継続勤務年数】  0.5 1.5 2.5 3.5 4.5 5.5 6.5年以上

【付与日数】    10日 11  12  14  16  18  20

 

 

 

医療機関における「当直勤務」に関しては少々ややこしい内容となっています。

宿日直勤務は、勤務が単調と認められうることから、労働基準監督署長の許可を受ければ、

36協定の締結、届出の手続きや、割増賃金の支払い等を行わなう必要がないとされています。

 

要するに、医療機関において、夜間勤務で通常の業務よりも労働密度が低い場合は、

労働基準監督署長の許可を受ければ、所定労働時間外の勤務であったとしても、

医療機関側が割増賃金を払う必要はないということです。

 

 

また、上記の労働基準監督署への「許可基準」は次のような内容となっています。

・常態として、ほとんど労働する必要のない勤務で、原則として定時的巡視、

 緊急め文書文は電話の収受、非常事態に備えての待機等を目的とするものに限ること

・宿日直手当は、宿日直勤務に就く労働者の賃金の11日平均額の13を下回らないこと

・宿日直の回数は、原則として、日直については月1回、宿直については週1回を限度とすること

・宿直については、相当の睡眠設備を設けること

 

 

これらの基準が満たされていない場合は、労基法において宿直勤務として認められないため、

37条の割増賃金の対象となります。

 

 

とまあ、いろいろ法律がありますが、守られていないことが多いです。

上記の事は医局絡みのケースだけでなく、民間病院やクリニックにおいても注意が必要です。

下記のような医療機関は要注意ですのでお気を付けください。

 

・事務長が経営者の親族

・職員の定着が悪い

・行政や警察とは仲が良く、感謝状がたくさん飾ってある

・雑誌ではいい病院とか経営の成功例として讃えられる

・事務方にお局がいる

・学会費や医師賠償責任保険は医師が自腹

・学会出席は休暇扱い

・交通費は給与に込み

 

 

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