産業医の給与(報酬)相場

今回のテーマは「産業医の給与(報酬)相場」です。

産業医資格を取得しようとしている医師で、「産業医は給与が高くて仕事が楽そうだから資格が欲しい」

といった声を耳にすることが時々あります。

これは、ある意味間違いではありませんが、根本的には間違いです。

まず、産業医は給与が高いという根拠として、月一回程度の嘱託産業医の例が当てはまります。

このような求人は、従業員数が50~数百名規模の中小企業の専任産業医です。

月一回の法定業務のみを請負うケースが多いので、仕事内容もハードではありません。

半日(実質2時間程度)で45万円なので、割が良いアルバイトといえるでしょう。

また、20代で大企業の専属産業医になった際も、そこそこ割が良いかもしれません。

臨床医が後期研修医として安い給与で猛烈に働いているのに対して、

企業の場合は入社当初から800万程度は確保されます。(場合によっては研究日も取得できます)

しかし、上記の二つは「限定条件付き」です。

中小企業の嘱託産業医の求人は滅多に公にはならないため、個人で探すのは難しいです。

大抵は医療機関が健診受注の見返りに、嘱託産業医も同時に引き受けているケースが多いため、

職場内で依頼されるケースはありますが、個人で直接企業から請け負うケースは稀です。

よって、個人で3040件の嘱託産業医を請負えば飯が食えるという「皮算用」は成り立ちません。

また、若いうちの専属産業医ですが、当初の給与はそこそこ良いですが、すぐに臨床医に抜かれます。

理由は、企業の昇給率が一般の医療機関ほど高くないからです。

しかも、若いうちから産業医になると、後に臨床医として潰しが効かなくなるリスクがあります。

以上の事から、産業医は決して給与や待遇で選ぶ職業では無いということが分かります。

ところで、産業医の給与には、それなりの相場があります。

採用する企業の担当者が無知でない限り、よほどの開きはないと思われます。

企業内で給与テーブルが準備されていることもありますが、そうでない場合も大体以下の範囲内です。

【産業医の給与目安】

 卒後35年:週1日あたり200万円未満(週4日勤務で700800万円)

 卒後610年:週1日あたり200250万円(週4日勤務で8001000万円)

 卒後1115年:週1日あたり250300万円(週4日勤務で10001200万円)

 卒後1620年:週1日あたり300350万円(週4日勤務で12001400万円)

 卒後21年以上:週1日あたり350400万円(週4日勤務で14001600万円)

  ※外資系企業は英会話スキルが必要となるため、上記よりも1割以上高くなります。

上記の目安はあくまでも目安です。

立地が悪く、人気の無いエリアであれば、これよりも高くなるケースもあります。

しかし、逆に立地が良く人気のある企業では、これよりも低くなるケースもあります。

また、場合によっては、週41200万程度で打ち止めになる企業もあります。

さらに、入社時から昇給が全く無い企業もあります。(何年経っても給与は変わらず・・・)

そういう企業に対しては、昇給をしないと医師が離れていきますよとアドバイスをしますが、

それを聞き入れてもらえない企業も中にはございます。

少し話が逸れますが、産業医として一つの企業に永く勤める意思があるようでしたら、

退職金のある企業を選択するのも良いかもしれません。

退職金は給与の後払いという要素が強いですが、受領時の税金が少ないというメリットがあります。

最近では滅多にお目にかかれませんが、大企業では正社員かつ退職金有りの所はたまにあります。

ただし、退職金付の正社員雇用の企業は、週5日勤務を必須としている企業がほとんどですので、

臨床のアルバイトを掛け持ちしようと思っている方はやめた方が良いでしょう。

以上のことから、産業医という職業を給与だけで選択することが間違いだということが

ご理解していただけたでしょうか?

ちなみに、専属産業医を必要としている企業は、大手メーカーがほとんどです。

大手メーカーとは、日本企業の中で外貨を獲得してくれる唯一の企業です。

(国内のサービス業や金融は、国内の消費を回しているだけで外貨獲得には役に立っていません。)

よって、それらの大企業は、日本の経常黒字を支えている重要な企業なのです。

日本は世界一の借金大国ですが、経常黒字国家だということで、未だ世界から見捨てられていません。

日本という国がデフォルトしないためには、更なる外貨獲得をし、国内の活力を向上させる必要があります。

その一役を担う仕事が、大手企業(メーカー)における専属産業医のお仕事なのです。

大手企業の社員が健康的に働ける環境を整えるために、やることは沢山あります。

企業を裏方として支えることに遣り甲斐を感じていただける方に、専属産業医のお仕事は向いています。

何度も申し上げますが、臨床医と比較して待遇は決して良くはありません。(極端に悪くもありません)

そんな産業医というお仕事ではありますが、日本の未来のために産業医として働くことにご興味をお持ちの方、

是非、JMCの馬場まで、お問い合わせください。