『真相は藪の中』

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平安時代、藪の中で1人の男が殺された。

検非違使が発見者、目撃者、加害者、被害者など7人から証言を聞くのだが、

どれも食い違っていて筋が通らない。

結局、誰が殺したのか、どうして証言が食い違うのか、作中では明らかにされないまま終わる。

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                                 『藪の中』芥川龍之介

 

この物語は、それぞれの人がそれぞれの立場で物事を考えるため、

実際に同じ現場に居合わせたとしても、証言が異なることを物語っています。

 

『藪の中』は黒澤明により『羅生門』のタイトルで映画化されました。

結局、「証言者は各々の保身のために嘘をついていた」ということであり、

『真相は藪の中』にという結論が出されています。

 

今世間を騒がしている海老蔵事件。

海老蔵の暴力沙汰については未だに真相は分かりませんが、

各々が自分の立場で証言すれば、真相なんてものは無いのかもしれません。

 

海老蔵の謝罪会見を聞いて、胡散臭いと思う人が多数いる中で、

あれを誠実だと感じる人もいるでしょうから、

結局人間というものは各々の主観で判断することが多いのです。

 

 

そういう意味では、本格的に運用され始めた「裁判員制度」は危険をはらんでいます。

法的に素人な一般人(6人)が意見を出し合い評決を得る裁判員制度は、

公判前整理手続によって争点や証拠が予め絞られます。

現行の裁判官のみによる裁判のように客観的な真相解明を疎かにする可能性があるため

一般人の主観的な判断にゆだねられることになります。

 

当然、裁判中のやり取りも、裁判員の主観に訴えかける手法が多くなり、

写真や映像などで悲惨さを煽るケースも増え、

表面的な内容だけで判断される可能性が高くなります。

 

国民の量刑感覚を判決結果に反映させることが目的ではあるのですが、

その量刑感覚ですら、人によって様々だと思うのです。

 

 

そういえば昨日、元法務大臣・鳩山邦夫がまたまた問題発言をしていましたね。

 

連続幼女殺人事件で死刑が執行された宮崎勤元死刑囚について、次の発言をしています。

「最も凶悪な事件の一つで、こんな奴を生かしておいてたまるかと思った」

 

鳩山元大臣は在任わずか1年の間に13人の死刑執行を決裁しましたが、

これは歴任の法務大臣の中では突出して多いようです。

法律では「死刑は確定後6か月以内に法務大臣が決裁し執行するもの」と定められています。

しかし、実際に執行されるのは死刑確定から平均でおよそ6年後となっています。

 

また、100人を超える死刑囚の選択方法については、これまでは一切明らかにされておらず、

法務大臣経験者が決裁のいきさつを明らかにするのはきわめて異例のことです。

 

特に、宮崎勤元死刑囚については以下のように語っており、完全に主観的に判断しています。

「(執行の)2週間前ぐらい前に私への説明資料は出来上がっていたと思う。

読んでて・・・怒りに震えてきますよ。これは執行しなくちゃならんと思いますよ。

正直言って、こんな奴を生かしておいてたまるかと思いますよ。

そう思わなければ死刑執行命令はできないんですよ」  by鳩山邦夫元法相

 

鳩山さんのいうことにも一理あると思います。

結局、世の中には様々なルールや法律があるものの、

最終的な判断に主観的な要素が入ることは間違いありません。

 

そうなると、普段からのイメージは非常に重要です。

通常ならセクハラになることも福山雅治ならば大抵のことは許されるでしょう。

今回のことも海老蔵じゃなければ、ここまで騒がれることはなかったと思います。

 

「君、いくら貰ってるの?」

 

のような挑発的発言を繰り返し、酒癖が悪かった海老蔵は自業自得としか言いようがないですね。

それにしても歌舞伎役者はどうして素行が悪いんでしょう?

猛省して出直すことを願います。

 

 

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