今回は先生方から時折ご質問をいただく、「年金」について触れてみようと思います。
よくある質問として、以下のようなものがあります。
「これまで開業していたため、国民年金をメインに納めてきたが、勤務医になるにあたって、
厚生年金に入らないといけないが、定年まで25年も無いため無駄ではないか?」
このような場合、常勤だと厚生年金に入らざるを得ないなので、
わざと週3.5日以内にして、非常勤として勤務したら良いのではないか?
というご意見をいただきました。
ここには大きな勘違いがあります。
そもそも、厚生年金とは受給時には「老齢厚生年金」が正式名称ですが、
受給資格は厚生年金保険の加入期間が1ヶ月以上あることです。
つまり、法人に勤めて、厚生年金保険料を、たった1ヶ月以上納めていれば受給できるのです。
(※65歳未満の方に支給する老齢厚生年金については、1年以上の被保険者期間が必要です。)
ということは、「厚生年金」だけを25年以上納める必要はない訳です。
「国民年金」と「厚生年金」の加入期間がトータルで25年以上あれば問題ないのです。
ここで簡単に日本の年金制度を説明しますと、制度そのものは3階建てとなっています。
原則として、20歳以上60歳未満の日本に居住するすべての国民は、国民年金に強制加入させられ、
資格期間が25年以上ある人が65歳になった時に1階部分として「老齢基礎年金」を受給できます。
次に2階部分として、民間サラリーマンには「厚生年金」、公務員等には「共済年金」があり、
企業や組織が義務として強制加入しなければならず、掛け金の半分を企業や組織が負担します。
そして、厚生年金を納めることで、1階部分の国民年金は自動的に加入しているものとみなされます。
3階部分は私的年金と呼ばれていますが、企業が福利厚生として運用している「企業年金」が代表的です。
企業年金には厚生年金基金や確定給付年金等があります。
(最近は企業の負担が大きいため無くなりつつありますが、JALでは年間300~400万あるようです。)
また、企業側のリスクを個人に移管した「確定拠出年金(俗にいう401k)」も3階建の一例です。
開業されている医師は、おそらく1階部分の個人年金のみの方が多いと思います。
勤務医の先生は、ほとんどの方が1階+2階だと思われます。
産業医等で大企業に長期間勤務されている場合は、3階部分の企業年金があるケースもあるでしょう。
いずれにしても、開業医以外の先生は、2階部分の厚生年金に入っています。
そこで、今回ご質問をいただいたケースですが、
開業医から勤務医にになる場合は、間違いなく厚生年金に入った方がお得です。
なぜなら、単純に厚生年金加入者の方が、国民年金のみの加入者よりも多くの年金がもらえます。
また、「厚生年金」は保険料の半分を所属している医療機関or企業が払ってくれるため、
全額を自分で収めなければならない「国民年金」よりもお得なのです。
さらに、「国民年金」の場合は、夫・妻のそれぞれが保険料を納めなければなりませんが、
「厚生年金」の場合には、配偶者が第3号被保険者であれば、保険料を納める必要がありません。
以上の事から、「厚生年金」に入らないという選択肢は有り得ない訳です。
もう一度、「厚生年金」のメリットをまとめますと、以下のことがいえます。
・「老齢基礎年金+老齢厚生年金」の2階建て年金がもらえる。
・ 保険料の半分を医療機関or企業が負担してくれる。
・ 第3号被保険者が国民年金保険料を納める必要がない。
また、「厚生年金」には、特定の条件を満たすと「加給年金」がプラスされる仕組みがあります。
以下の2つのうち、1つでも条件を満たせば良いので、
今後開業を予定されている医師は、厚生年金に20年以上入った後の方がお得といえます。
(加給年金は計算式が複雑なので、興味のある方は別途調べてみてください。)
・ 厚生年金加入者の被保険者期間が20年以上ある方
・ 40歳(女性の場合は35歳)以降に15年以上ある方
以上、長々と書いてしまいましたが、「厚生年金」とは有難いシステムなので、
入らないという選択肢は無いといえます。
定年までの期間が短い場合でも、ご心配なさらずに加入してください。
<参考>公的年金制度