スタッドレスタイヤ

sutad.bmp

 

 

以前わたしはタイヤメーカーに勤めていたことがあります。

タイヤの開発には一度も携わったことはないのですが、

一般の人よりはタイヤに興味を持っています。

例えば、昔はタイヤのトレッドパターンを見ただけで、

どこのメーカーのタイヤか分かりました。

(今は多くの海外メーカーが乱立しているため分からなくなりましたが)

先日、大雪が降った際、タイヤチェーンが爆発的に売れたようですが、

積雪が多い年はスタッドレスタイヤがよく売れます。

なので、逆に暖冬の年は、タイヤメーカーの株価が下がることもあります。

このスタッドレスタイヤですが、歴史を紐解くと結構面白いです。

元々、冬場に履くスノータイヤは、金属製のスパイクを埋め込んだものが主流でした。

このスパイクタイヤは、性能的には凍結路では抜群に安定しており、

わたしが子どもの頃は、誰もがスパイクタイヤを履いていたように思います。

しかしこのスパイクタイヤは、アスファルトを削り「粉塵」を発生させるため、

粉塵を吸い込んだ人が気管支喘息になるなどの健康被害を発生させてしまいました。

雪の多い地域では問題ないのですが、都心部では社会問題になり、最終的には規制されてしまいます。

そして、1982年にミシュラン(仏)からスタッドレスタイヤが発売されるようになりました。

スタッドレスタイヤは冬場だけ履くタイヤですが、夏タイヤに比べて劣る面もあります。

柔らかいコンパウンドを使用していたり、雪道専用のトレッドパターンとなっているため、

雨の日はカーブで横滑りを起こしたり、制動距離も長くなります。

また、乾いた路面を走ると溝がすぐ減ってしまい、燃費が悪くなるケースもあるため、

冬季シーズン以外はできるだけ夏タイヤを履くことをお勧めします。

ただ、このスタッドレスタイヤというのは常に技術革新しており、

タイヤメーカーによっても滑り止めのメカニズム自体が異なるため、非常に興味深いのです。

例えば、あるメーカーではグリップ向上のために、気泡を含んだゴムで吸着効果を向上させています。

また、あるメーカーではガラス繊維やクルミの殻を練りこんで引っ掻き効果を持たせたりしています。

一般的には、サイプパターンで摩擦を稼ぐという手法が主体だったのですが、

それだけでは差別化が難しいため、各メーカーが独自のユニークな手法を開発しています。

わたしがいたメーカーにおいては、「撥水」により滑りを止めるという技術を駆使していました。

元々、氷が滑るのは表面の水分が原因のため、その水分を無くして滑らないようにするというものです。

シリカという油分で水分を弾いて「撥水」させるのが特徴です。以前CMでもやってました。

ただ、わたしが思うに、これらの性能差は体感できるほどのものではないと思います。

どちらかというと、販売する際に差別化をするための「うんちく」だと思うのです

電化製品や自動車などでも同じことがいえますが、

世の中に出ている商品のうち、体感できるほど差がある商品はそれほど無いと思います。

「マイナスイオン」のなかでも、「ナノイー」とか「プラズマクラスター」とか違いは分かりません。

とにかく、「説得力のあるストーリー」いわゆる「うんちく」が重要なのです。

購入した人が満足すれば、それで良いのです。

思い込みによる「イメージ」って大切ですね。

 

 

dunlop2.jpg