長い目で考える太陽光発電

ソフトバンクの孫正義社長が熱弁を振るう姿を、最近よくメディアで見かけるようになりました。
会社の定款を変えてまで、あえて本業以外の事業に初めて乗り出すメガソーラー構想、
そしてそれを進めるための電田(でんでん)プロジェクト。
孫社長のメッセージは分かりやすいのがいいですね。
全国の休耕田や耕作放棄地、他にはたとえば今回の震災で海水をかぶって畑としては使えなくなってしまった土地だとか、
そうした広大な土地にばんばん太陽光パネルを設置すると。
これに800億円を投資して全国に10か所の発電所をつくれば、原発50基分の電力が賄える。
そうすれば雇用も大量に生まれて、経済も活性化する…。
僕みたいなまったくの素人でも実にイメージしやすくて、しかも大胆で夢のある構想です。
この明快なビジョンは、さすが情報革命の風雲児!という感じがします。
先週の14日から、再生エネルギー特別措置法案の審議が国会で始まっています。
メガソーラー構想実現のためには発電した電力をすべて電力会社に買い取ってもらうことが必須ということで、
孫社長が菅首相の面前で「この法案だけは、絶対通してほしい!」と訴えたパフォーマンスもインパクトがありました。
いまや菅-孫ラインとまで言われるほどの蜜月ぶりが功を奏する結果になるのか、
この法案の審議の行方を注視していきたいと思います。
ところで今回の法案というのは対象が電気事業者という話で、
実は住宅用の太陽光発電については、電力会社が買い取ってくれるしくみは2年も前からあったわけで、
もしかしたらすでにご自宅や仕事場に太陽光パネルを取り入れていたり、
設置を検討中だったりする先生もいらっしゃるかもしれませんね。
実際、震災後に導入が急増しているという報道も目にします。
それで、住宅用太陽光パネル発電による売電が、どの程度の収益を見込めるものなのか
ちょっと気になって調べてみました。
まず設置に費用はいくらかかるかというと、太陽光発電協会のサイトによると、
1kW当たりの平均価格が60.6万円とのことですので、一般的な3kWhのシステムだとすると181万8000円。
※平成21年度の住宅用太陽光発電システム平均設置価格(機器・工事費込)
太陽光発電には国からの補助金があり、これは1kWhあたり4.8万円と定められています(平成23年)。
よって、14万4000円を差し引いて、167万4000円。
それで、発電量のほうは、1kwシステムあたりの年間発電量が1000kWhで、
仮に3kWシステムとすると年間で3000kWh。
これに対して、1世帯当たりの年間総消費電力量はざっくり5500kWh。
単純化するために1kWhの電気料金を25円とすると
(実際の電気料金は利用状況に応じて細かく決められているのであくまでも大ざっぱな計算ですが)、
年間の電気代は13万7500円。そのうち自前の電力で賄える分は7万5000円ということになります。
  1,674,000÷75,000≒22.3
つまりこれだけだと、かかった費用の167万4000円を回収するには23年もかかってしまうことになります。
そこで、売電ということになりますが、
実際に売電できる部分というのは、図で言うと薄いオレンジ色の部分ということになります。
でもこれは生活スタイルなど人によって変わってきますし、
シミュレーションがなかなか難しいところですね。
現状だと、この余剰電力については1kWhあたり42円で買い取るということです。
(ただし来年以降は30円台後半になると想定されています)
この売電の部分ををいかに大きくとることができるかによって、15年で回収できるのか10年で済むのかが分かれてきそうです。
しかも現状だと買取期間は10年間という想定になっていますから、さらにハードルは高くなります。
結局、身も蓋もないような話になってしまいますが、平均値を追っていく限りでは
太陽光パネルの売電で収益ベースに乗せるのは簡単ではないようです。
日当たりがすごく良いとか屋根がすごく広いとかいう前提の上に、
たとえば自治体によっては助成制度を持っているところがあればそれを活用したり、
相場よりも安く施工してくれる業者が見つかったり、
そして売電が効率よく行えそうなシミュレーションができそうだといった
何かしら平均値よりも有利に持って行けそうな目算が立ったときに、
10年単位のスパンで考える、長い目での投資ということになるのでしょう。
あと、すでに太陽光パネルを取り入れた人のコメントのなかにあったのですが、
火力や原子力に依存しないでクリーンなエネルギーを使っているという優越感みたいなもの。
これがいちばん大きいかもしれないですね…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。