特権…

先日、神田のとある喫茶店で待ち合わせまでの時間を過ごしていると、
隣の席からこんな会話が聞こえてきました。
  So社もPa社もだめでしょう。それにSh社も含めて、日本はもう根こそぎダメですよ。
初老の紳士が日本を代表する電機メーカー3社の名前を挙げて、
この国の国内産業の見通しには期待できないといった話を始めました。
  いまさらリストラしたって、生産性そのものがないんだからダメなんです。
  スマホがこれだけ売れているというのに、国産のものなんてゼロ%じゃないですか。
  設計はアップルで、実際に中身を作っているのはというと、台湾、中国、韓国…。
こうした会話を耳にすることは、最近はガード下の飲み屋などでも珍しくなくなりましたが、
たとえば為替で大損したのを日本の国力のせいにしたがるFXトレーダーや、
買った株がどんどん下げているのを景気のせいにしたがる個人投資家だったり、
(僕も人のこと言えませんが…)
それか、自分の業績のことは棚に上げて経済評論家を気取る営業マンだったりしますかね。

でもその人は話し振りやその内容からして、そういう感じではありませんでした。
おそらく経済学系の学者か、または研究機関などに所属して経済データを分析することを
仕事にしている方なのではないかという雰囲気でした。
対面に座ったグレーのスーツを着た50がらみの男性に向かって、
さらに熱っぽく語ります。
  今年は日本の”付加価値ゼロ元年”になりますよ。
  ここまでくると、この国は本当に奈落の底に落ちてしまいます。
  私はそれを見届けてから死ぬことになるんでしょうね。
なんだか専門家っぽい用語が出てきて、しかも、
専門家なればこそ抱える悲哀というか無力感みたいなものも、言葉の端々に漂わせています。
  法人税はかつて10兆円はあったんです。それが今は、4兆円しかない。
  こうなるともう、年金どころの騒ぎじゃないはずなんです。
ほう。なるほど、それはそうですよね。
法人税については財務省のサイトにグラフが載っていますので、
その推移を見てみましょうか。
確かに、平成19年から21年にかけての落ち込み方は、すごいです。
このグラフだと15兆円位から6兆円位への急降下ですね。
この3年ほどで半減しているのは誰の目にも明らかです。
  それなのに役人の給料が下がらないのはどう考えてもおかしい。
  しかもあれだけの震災で大変なダメージがあったはずなんですよ。
  でも実際のところは、何も変わっていない。それが私には信じられない。
まあそうなのでしょうけど、いつの間にか吐き捨てるような言いっぷりになっています。
それにはどうも確証があるようで、というのも…、
  うちの息子がね、役人はみんな遅くまで残っているというんです。
  でも遅くまで残って何をやってるかというと、何もやっていない。
  それで、残業代だけもらってるって言うんですね。
ふーん。どうやら息子さんが経済官僚をされているということみたいです。


  それで彼らが唯一やらなきゃならない仕事って言うのは、
  学者にレポートを書かせてそれを取りまとめる仕事なんですよ。
  一流大学を出て国家Ⅰ種に受かったエリートがやってる仕事っていったって、
  たかだかその程度なんです。


これってみなさんはどう思われるでしょうか?
高い報酬をもらってるのに相応の仕事をしてないのはけしからん、という気持ちが強いですか?
それとも、若い頃にたくさん勉強して難しい試験に受かったエリートなのだから、
そうした恩恵に与れるのも当然の特権、と考えますか?
ほんの数分間のことでしたが、街でこうした会話を実際に耳にすると、
なんだか世の中のしくみというと大げさかもしれませんが
人々を動かしているからくりのようなものを間近でリアルに覗いてしまったような、
そんな気持ちになってしまったのでした。
苦労して獲得した特権っていうのは、誰しも手放したくないものですが…。
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