日本円というリスクを忘れない

一昨日、S&Pが日本国債の格付けを1段階下げたとのニュースが大きく報じられました。
前回、国債はなんだかんだ言っても大丈夫だったという話をしたその矢先のことでしたし、僕はちょっと面喰らったわけですが、
専門家のコメントやニュースの解説などを見ると、特に驚きの声はないようですね。
それも、日本の累積債務が1000兆円にもなっているらしいという現実を考えると、
格下げされて何も言えないのも、まあしょうがないかなという気持ちになります。
当の菅首相が「そういうことには疎いので…」とコメントしたのには笑っちゃいましたけど…。
1000兆円なんていう天文学的な数字ですが、どれ位のものか想像してみましょう。
1万円札の新札を積み上げると100枚で1センチになりますから(ここまでなら僕も見たことがあります)、
1000枚だと10センチになります(先生方ならこの位も見たことありますかね)。
なので、厚さ1メートルで1億円。1万メートル(10km)で1兆円です。
つまり1000兆円ということは1万円札を積み重ねて1万キロメートル…。
1万円札を、積み重ねた状態にして(横に並べるのではなくて)1万キロの厚みということです。
でも成層圏の高さはたかだか10kmから50km程度。
1万キロというのは、すでに厚みを表現するのに適当な数字ではないですね。
その積み重ねた1万円札の柱をそのまま倒すと、東京からだとヨーロッパまで届いてしまいます。
地球の周囲の長さが4万キロですから、4分の1周ということになります。
距離としてみた場合でも、1万キロというのは途方もない数字ですよね。
いま乗られてる愛車の走行距離は、まだ1万キロまで行ってないんじゃないでしょうか?
ついでに、1万円札を敷き詰めたらどうなるのかも計算してみました。
1万円札は16cm×7.6cmですから、1枚で約0.0122平方メートル。
1000兆円は1万円札が1000億枚ですから、
   0.0122×100,000,000,000=1,220,000,000
つまり12万2000ヘクタールということになります。
だんだんわけがわからなくなってきましたが(笑)
12万ヘクタールといわれてもピンとこないので
イメージできそうな比較対象を探してみました。
・北海道の小麦作付面積(全国1位)
・岩手県のカラマツ林の面積(岩手県は北海道、長野県と並んでカラマツの”御三家”といわれている)
・ボルドー地方のブドウの栽培面積
・東京湾(神奈川県の観音埼から千葉県の富津を結ぶ線まで)の海域面積
これだけの面積が1万円札で敷き詰められているところを想像すると、
あらためて、まあとにかくものすごい金額の借金をこの国が背負っているということがわかります。
しかも、その規模が国内総生産(GDP)との比較でいうと200%つまり2倍を上回っているということなんですね。
国の借金がGDPの200%を超えるというのは、まるで戦争中の国のような事態なのだそうです。
戦時ならば、相手国に負けないように借金してでも戦費を捻出するというのは、
共感はしませんが理屈としてはわかりますけど、
でも今の日本がここまで借金を膨らませているのは、いったい何に負けないように頑張っているのでしょう?
ところで、以前、日本の財政がここまでひどくなったのは、やはり戦争中のことでしたが、
その時にも国債が大量に発行されていました。調べてみるとなかなか面白くて、
これは昭和15年~16年に売り出された国債のポスター。
なんとも無邪気な感じがします。
でも当時、国債を買った資産家たちの多くは、
償還時にはハイパーインフレで物価が200倍にもなっていたりしたせいで、
大変な目に遭ったわけです。
昭和13年に発行されたこの額面15円の債券は、当時は10円で買えました。
たしかに「金拾円ニテ売出シ償還の際金拾五円を支払フモノナリ」と書いてありますね。
買った当時の物価水準は、10円あれば金太郎飴が200本くらい買えたそうですが、
その後、終戦の混乱を経て物価は急激に上昇し、
償還時に手にした15円というのは、金太郎飴でいうと1本分の価値にしかならなかったそうです。
そんな思いだけはしたくないものですね。
こうなってしまうと、日本円で資産を持っていること自体がリスクとなるわけです。
当時はリスクヘッジのために日本円以外でも資産を持っておくということ自体、
発想できていた人がどれくらいいたのか分かりませんが、
このときの教訓を生かすとするなら、日本円そのものがリスクとなり得るということを常に忘れないでおく、
といったところでしょうか…。
 
 
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