自給自足

先月知り合いになったファンドマネージャーのTさんは、穀物ファンドの運用を手がけている人です。
穀物ファンドといってもなじみが薄いかもしれませんのでざっくりと説明しますと、
数あるファンドの中には、前回紹介した”グロソブ”のように主要国の債券に投資している投資信託もあれば、
たとえば環境問題対策に積極的に取り組んでいる企業に投資しているようなファンドは
数年前から”エコファンド”などと呼ばれるようになったりしています。
“ファンド”という言葉は、投資家から集めて運用する資金のことを指して広く使われますが、
穀物ファンドとはその名のとおり、その運用先をトウモロコシや大豆などの穀物に特化して運用しているファンドのことを言います。
それでTさんは日々、商品市場で穀物価格を追いかけているわけですが、
そのような仕事をしていると、ある危機感に襲われるのだそうです。
それは、
“この先、穀物の価格が一気に急騰したらどうなるのだろう?”
“たとえば日本が海外から穀物を買えなくなったらどうなるのだろう?”
というところから始まって、行き着くところは、
“いずれ日本にまた食料が足りない時代がやって来るのではないか?”
にまで発展するのだと。
よく知られていることですが、日本の食料自給率はいま、約40%。
この数字は1990年代後半からの十数年間、ほとんど変化がありません。
ちなみに世界の主な国の食料自給率は下表のとおりです(2007年時点)。
これを見ると、たしかに先進国のなかでも日本は食料自給率が
極端に低い国だということが見て取れます。
Tさんは最近の穀物相場の動きを見るにつけ、
とくにアメリカや中国などでは国家戦略の一環として穀物相場が利用されていることや、
それに比べて日本には危機管理の体制がまったくできていないことを強く感じるのだそうです。
日本にまた食料不足の時代が来る…。
にわかにそんなことを言われてもなかなか実感できない部分がありますし、
別にことさらに不安をあおる必要もないとは思いますが、
“穀物のプロ”が現場から発している警告ということで、
とにかく聞く耳だけは持っておいても損はないと、僕は思っています。
Tさんに言わせると、日本の今の食料自給率は貧困国の部類に入る、
ただ日本が貧しい国と唯一違う点は、海外から食料を輸入するための外貨をたくさん持っている、
ただそれだけなのだと。
つまり、もし世界で食料が逼迫するようなことが起きたときは、
今のように強い円で世界から食料を買い続けることができているうちは大丈夫だとしても、
仮に円が急落して極端な円安の時代になったとしたら、海外から食料が入ってくることはアテにできなくなる。
そうなると自国内で生産される食料だけが頼りになりますが、
いまのままだと、とてもじゃないが日本人全員を賄いきれない…。
こうしたことは、ドル円相場の今後を考えると、決してありえないシナリオではないんですね。
そのとき、日本は今の北朝鮮やアフリカの最貧国などとまったく同じ立ち位置に置かれてしまうということです。
だから危機の時代が訪れる前に、自分たちの食料は自分たちで確保できるようにしておかなければならない…。
うーん、自給自足ですね。
もしこの危機感を他人事では済まされないと感じられるようでしたら、
僕らにできる防衛策として、とりあえず家庭菜園あたりから始めてみることでしょうかね…。
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