術中でのiPad活用事例その1

先週の更新はお休みしておりました。

今回はiPad活用事例第1弾と行きましょう。術中のiPad活用は診療所レベルでも始まっています。こちらのご紹介です。

 下肢静脈瘤の治療を専門とする東京ヴェインクリニック(東京都豊島区)では、手術を毎日2件ほど実施しているそうです。ストリッピング術(伏在静脈抜去術)だけでなく、最先端治療として注目の高いレーザーストリッピング術(レーザー焼灼術)まで幅広く手掛けます。ただ、局所麻酔をかけて静脈を抜去したり、静脈にレーザーファイバーを入れて焼灼するなど、医療事故のリスクも高いようです。

 院長の近藤啓介氏は、以前は術前に患者の電子カルテをデスクトップパソコンで確認し、治療部位や症状などを頭に入れてから手術に臨んでいました。しかし、「超音波検査の所見はどうだったか、前回の手術はどう施行したのかなど、術中にカルテの情報を参照したいケースも度々あった」(近藤氏)。そこで発売早々に購入したiPadを手術室に持ち込み、その場でカルテを閲覧できるようにしたということです(写真)。どこにでも持ち運べ、指1本で画面を切り替えられるなど操作性の優れたiPadは、術中のカルテ確認に最適だったわけです。

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写真 東京ヴェインクリニックの手術室(提供:近藤氏)
手術時にiPadでカルテを見ながら患者の下肢静脈瘤の状態を確認している。

 同クリニックでは、iPadでの閲覧にいち早く対応したオープンソースの電子カルテ「OpenDolphin」(開発:デジタルグローブ)を利用していたため、導入は容易だったとの事です。

現在では、純粋にiPadを院内システムと連携させなくとも、iPadで院内PCのデスクトップ画面を表示させ、iPadを用いて院内PCを遠隔操作ができるようにもなっております。この方法を一般的には DaaS(Desktop as a Service)と言われていますが、費用的にも納得しやすいものになっています。

今後中小医療機関にも広がりを見せるきっかけとなりそうです。

話が少し逸れましたが、術中でのiPad操作は、感染管理の観点から手術補助の看護師が行い、術者の近藤氏はiPadに触れずに目の前に差し出された画面を確認しているそうです。

 今後は、過去の術中動画なども閲覧できるようにし、手術の効果や正確性をより向上させる事ができるでしょう。

日経メディカル2010.10.19 参照