給与のもらい方で税金や社会保険料の節約ができるのでしょうか

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第3回 給与のもらい方で税金や社会保険料の節約ができるのでしょうか

Q

私は、将来は父親が経営するクリニックを継ぐ予定ですが、医局を辞めることが決まり、先輩である医師から、修行もかねて先輩の病院に勤務してみないかと声をかけられています。給与等の条件面については、できるだけ要望に沿うようにと言っていただいているのですが、給与のもらい方によって、税金などの面で有利不利があるでしょうか。

A

給与に関しては年間で同額の支給を受ける場合でも、支給方法によって社会保険料の金額が大きく変わるケースがあります。また、いずれ親の後を継ぐと言うことで、一定期間後の退職が前提となっているのなら、給与額を抑えて、退職金を多く受け取るような雇用契約にすることで、所得税の節税ができる可能性があります。

1. 支給方法によって変わる社会保険料

所得税や住民税については、給与収入が増えれば増えるほど、税負担が重くなる仕組みとなっており、上限は存在しません。ところが、社会保険料については、一定金額に達すると、上限金額となり、それ以上の負担が生じない仕組みとなっています。現状の上限金額をみると下記のようになっています。

厚生年金(給与) 健康保険(給与) 厚生年金(賞与) 健康保険(賞与)
62万円 117.5万円 月額150万円 年540万円

具体的には、月額の給与が117万5千円以上になれば、給料に対する社会保険料は、頭打ちの状態となります。月額給与が120万円の人も、200万円の人も給与に対する社会保険料は同額になります。例えば、年間2400万円の支給総額のうち、月額給与を120万円、賞与を960万円と割り振って受け取る場合には、月額給与に対する社会保険料とは別に、賞与に対する社会保険料が上乗せしてかかるため、月額200万円ずつ給料与を受け取る場合に比べて、社会保険料の総額が高くなるという現象が起こります。

逆に、月額給与を小さくして、賞与を多額に受け取るケースでも同じように社会保険料の負担額が変わってきます。例えば、月額報酬を月に10万円として、年に1回2280万円の賞与を受け取ると、厚生年金は賞与について150万円の料率、健康保険については540万円の料率となります。結果として、賞与の大部分には社会保険料がかからないような結果となってしまいます。

2. 退職金は所得税と住民税が優遇

例えば10年間勤務した場合に、トータルの受け取り金額が同じだとすると、通常の給与や賞与で受け取るより退職金で受け取る金額を増やすことで、所得税や住民税が節税できます。

これは、退職所得については、退職所得控除が認められる上、退職所得控除後の金額を、さらに二分の一にして、所得税率を適用するからです。

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A (80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

退職所得控除額の具体的な計算例を示すと、勤続年数が10年2ヶ月の場合は、下記のように計算します。

勤続年数が10年2ヶ月→端数は切り上げて 11年間
退職所得控除額 40万円×11年=440万円

つまり、10年2ヶ月勤務した場合は、退職金440万円までだと、まったく税負担が生じないことになります。仮に、1,000万円の退職金を受け取った場合でも下記のような計算となります。

退職給与額1,000万円-退職所得控除額440万円=560万円
560万円×1/2=退職所得の金額280万円
280万円×10%-97,500円=182,500円 (所得税の速算表適用)

退職金であれば、1,000万円の収入に対して、所得税が18万円強で、それ以外に復興税、住民税の負担がありますが所得税と合わせても47万円弱の負担にしかなりません。因みに年間1,000万円程度の収入に対しては160万円前後の税負担が生じますので、かなり有利な取扱いとなります。

退職所得について、より詳しく知りたい方は、下記をご覧ください。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1420.htm

税理士 飯田聡一郎

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