循環器60代の先生
64歳のH先生は、多摩地域北西部にある公立病院の院長をされていました。
お住まいは住みたい町で常に上位に入る武蔵野市。現在の勤務先へは単身赴任で週末に自宅に帰るという生活をされておりました。
定年を迎えるにあたって、次の就職先を探すという事で相談を受けました。
再雇用制度を利用して残ることもできるのだけれども・・・という所からお話はスタートしました。
所謂、僻地の公立病院のため自治医科大学からの派遣医師を指導したりと、バリバリ働かれており、次のステージでもバリバリ働きたいと考えていた一方で、これまで単身赴任の生活を続けていたため、奥様との時間も大切にしていく時期ではないかと考えられておられました。
また、副院長・院長と歴任してきた経歴があり、役職への拘りも捨てきれずにいらっしゃるようでした。
武蔵野市から通勤圏内の病院の情報収集をしましたが、ご年齢の部分とポジションがマッチする求人を獲得できずにいました。
そんな中、療養型病院や老健施設など高齢者医療に特化しているA法人より新規開設病院の求人依頼を頂きました。
開設にあたって院長に相応しい人がいれば、外部から招へいしたいというお考えでした。
私はすぐさま、H先生にこの案件についてお伝えした所、興味を示して頂きました。
建築中の病院のため、A法人採用担当者が多摩地域北西部にある公立病院まで出向いて新病院のコンセプト等お話頂くことになりました。
A法人採用担当者の懸念は、
・公立病院でアクティブに働いていた先生が療養型病院の働き方に満足してくれるか?
・まるめ医療のため、必要最低限の処置という事にご納得頂けるか?
その2点について、率直な意見を求められた結果、H先生からの反応は、
「私も長年医療をしてきて分かったのは、いい医療をする為にはお金が必要です。お金があればハード面を整えられ、患者様に還元できます。中には事務方のいう事を聞かない医者もいるかと思いますが、経営は経営のプロに任
せて、私はそれに従います。」
という回答でした。
要職を歴任してきた先生だったので、もう少し頑固な面を見せられるかと思っていたので、拍子抜けした気がしました。
A法人採用担当者は、その言葉を聞いて、安心された様子で、
「是非、新しい病院の院長に就任して頂けると有難いです。一緒にいい病院を作っていきましょう」
とその場で、諸条件の話になりました。
条件は週4日 1,800万円 当直は免除でした。都心の好立地の病院のため、大学からの医師で当直はまかなえるという事でした。
これであれば、奥様との時間も十分作れるという事で、快諾して頂けました。
それから半年後、新病院が完成し、内覧会が行われました。
私も招待され、H先生が生き生きとスピーチをされておりました。流石、管理職を歴任されてきた方だなとあらためて感じました。
H先生からは、
「実際に働いてみないと療養型病院がどういう所なのか本当の所は分からないけれど、新しい病院で新しい職員と一緒に立ち上げていく。
そんなチャレンジが65になってできるんだから楽しみだよ。奥多摩の奥地まで来てくれてありがとうね。」
とお言葉を頂きました。
またいつの日かH先生が院長として採用面接に出てこられる日を私自身は楽しみにしています。