皮膚科と子育て
I先生から相談を受けたのは、梅雨明け宣言がでた7月半ばの蒸し暑い時期でした。
求人サイトより登録頂き、早速お電話で転職動機や希望条件を聞こうとした所、赤ちゃんの泣き声が。
「すみません。子供が泣いてるので、またこちらから連絡します。」
育児中という事が理解できたので、次のコンタクトまでに育児に理解のある医療機関の情報を収集する事にしました。
それから2日後、I先生からお電話があり、
「子供連れでよければお会いして現状や希望をお話したいんですが」
翌日、I先生のご自宅最寄り駅のカフェで面談を致しました。
<現状>
お子さんは8か月。
ご主人は整形外科医。手術・救急対応・当直とアクティブに働いており、なかなか育児の協力は得られない。所謂ワンオペ育児。
年度替わりのタイミングで医局を退局したため、産休・育休という形ではなく、次はフリーでの就職になる。
知人の紹介で不定期のアルバイトはしている。
<希望>
4月より認可保育園に入園させたい。
送り迎えの関係上、遅い時間までは就業できない。
子供の熱発等で急なお休みの対応をして頂けるか、又は子供を休憩室などに連れて行くことが可能か。
皮膚科学会専門医を維持していきたい。
週4日勤務。お給料はそれほど拘らない。
自宅最寄り駅から45分以内。
育児中の先生方の希望条件は近しいため、事前に準備した3パターンの施設を提案致しました。
1)大手医療法人で保育所が併設されているA病院。皮膚科は1診。
2)複数診療科を設けている総合Bクリニックで、休憩室を利用する事ができる。皮膚科は1診。
3)現在は院長(男性)1診体制のC皮膚科クリニック。患者増加に伴い2診体制にしたい。
I先生は3パターンとも興味を示して頂けましたが、A病院については辞退されました。
病院勤務は勤務時間が17時や17時30分までと遅くならないメリットがあるのですが、入園させたい保育園があったようです。
早速、総合BクリニックとC皮膚科クリニックの面接・見学を設定致しました。
総合Bクリニックは複数クリニックを展開している法人で、医師や看護師の中にも育児中の方が多数在籍しており、育児に理解がありました。
採用担当者からは
「現在、皮膚科は火曜と土曜にアルバイトの先生にお越し頂いています。当院の都合ですが、月曜水曜木曜金曜の週4日勤務だと有難いです。
火曜、土曜に患者さんが集中してきているので、それが分散されれば1日あたりの患者数は多くなく、先生の負担も少ないのではないでしょうか。」
とご提案頂きました。
休憩室にお子さんを連れてくれば、職員がみてくれるそうです。
しかしながら急な熱発のお休みの対応は、完璧な対策は難しく、完全予約制を敷いているため、予約患者様に職員が1件1件電話をして、別日に来院頂く他ないとの事でした。
続いてC皮膚科クリニックへ面接・見学に行きました。
開業して5年目で、院長先生の丁寧な診療と職員の頑張りのお陰で患者様が増え、19時受付終了にも関わらず20時を過ぎる日が続いているようです。
「皮膚科の特性上、会社帰り学校帰りの患者様が多く、本音を言えば19時まで診療してもらえると助かるのだけれど、女性医師のニーズは高く、是非I先生に力を貸してもらいたいです。
女性の患者さんで特に思春期の方は、女性の先生の方が相談しやすいはずです。
慣れるまでの間は17時30分で退勤してもらって構いません。
またお子さんの体調が悪い時は休んでもらっても大丈夫ですよ。僕がこれまで通り1診で頑張ればいいだけですから(笑)」
総合Bクリニック・C皮膚科クリニック両院の面接を終えて、I先生の感想は、
「両院ともとてもいいお話で迷う所ですが、自分が安心して働けるのはC皮膚科クリニックです。
院長先生にはご迷惑をお掛けしてしまうかもしれませんが、育児が落ち着いたら必ず恩返ししたいと思えるお人柄でした。」
C皮膚科クリニックの院長に、上記をお伝えすると
「復帰のお役に立てて光栄です。小さなクリニックですのが、お互い様の精神で、僕に何かあった時はよろしくとお伝え下さい(笑)
就業証明書等必要な手続きあったら教えて下さい。」
と本当に気持ちのいいお返事を頂きました。
組織が大きく産休育休制度が整っている医療機関も候補ですが、小規模だからこそ融通が利く医療機関もあります。
そういう小規模の医療機関の情報収集をしていくのが我々の仕事だなと実感させられる事例でした。