罪と罰…

十数年にもわたる損失隠しの実態が明らかになり、
オリンパスの経営をめぐるドタバタが続いています。
決算報告書の訂正版を期限である12月14までに提出したことによって上場廃止はひとまず回避されはしたものの、
東証の判断しだいでは、まだどうなるかわからない状態です。
きのう(15日)開かれた高山社長の記者会見では、過去の決算について配当可能利益が不足していたことなどが明かされて、
株価は前日比273円(20.77%)安という大幅安となりました。
経営陣の刷新がどうなるか、注目されるところですね。
個人的には、ウッドフォード元社長にがんばって欲しいと思っていますが…。
オリンパスはご存知のとおり消化器系内視鏡のトップメーカー。
世界シェア75%ということですからその市場支配力はダントツです。
国内では独占に近いとされる優位性にモノを言わせて、値引きをしないことでも有名だそうですね。
内視鏡で治療を行えば行うほど、オリンパスだけが儲かるという構図も指摘されていました。
そうして得られた収益が、バブルの頃に出した巨額の損失の埋め合わせに使われていたなんて、
怒り心頭という先生もいらっしゃるのではないでしょうか?
損失を「飛ばす」ため、リヒテンシュタインだとかケイマンだとかわけのわからない海外のファンドに資金が流れていたり、
おそらくは、そうした悪知恵を提供した一握りの幹部の懐にも入っていたでしょうし、
それもこれも、元をたどると患者の治療費や僕らの保険料から出ていることを考えると、
なんともやりきれない気持ちになります。
先週(6日)、第三者委員会がまとめた報告書によって、一連の損失隠しの全貌が明らかにされました。
その手口は歴代3人の社長やそれを取り巻く一部の幹部だけが認識していて、
「経営の中心が腐っていた」とのこと。
企業ぐるみではないということですから、現場で働く社員の方には罪はありません。
逆にれまで会社の売上のために一生懸命頑張ってきたのに、これからは非難の矢面に立たされるわけで、
むしろ多くの社員は一番目の被害者と言うべきかもしれないですね。
何が行われていたのか、第三者委員会が作成した資料を見てみましょう。
「損失分離スキーム」と「損失解消スキーム」、二つのフローチャートがあります。
もっとも、これを見ただけでは何がなんだかだかさっぱりわかりませんが…。
ごくごくかいつまんで言うと、話はバブル前夜の1985年までさかのぼり、
当時の下山社長が財テクで大損をしたところから始まります。額にして約1177億円。
それで、その巨額の損を簿外に「飛ばす」方策が、図の「損失分離スキーム」です。
バレると会社の信用が落ちるし株価は下がるということで、
シンガポール、ヨーロッパ、国内のそれぞれの受け皿ファンドへと、損失が「飛ばされ」たのですね。
それらの損を穴埋めするのが、もう1枚の図で示された「損失解消スキーム」。
新規事業で国内のベンチャー企業の株式取得のために大金を投じたというのが、彼らが描いたシナリオです。
と言われても、これらの図を見ても、とにかく複雑だということ以外は、やっぱりよくわかりませんが(笑)
一連の隠蔽工作はトップとそれを取り巻く数名だけの極秘事項で、しかも最優先課題だったとのこと。
彼らにとってこの十数年間は、なんとスリリングな時間だったことでしょう。
前社長の菊川氏によって発せられたナマナマしい言葉が新聞記事にも書いてありました。
「どうだ、全部(損を)消せるか」
「これで終わるといいな」
さらに想像を膨らませちゃいますと、銀座の超高級料亭の一室で、ぷりぷりの車海老の刺身などをつまみつつ、
「これですべてキレイになりますよ社長。ご安心ください」
なんて言ってたのでしょうか。そして大吟醸でもすすりながら、
「おぬしもワルよのう」
「いえいえ、社長ほどではございませぬ」
「ふぉーっふぉっふぉっふぉ」
みたいなやりとりが交わされていたりして…。
大損させられた投資家などは怒りが収まらないのではないでしょうか?
オリンパスの株主は、日本生命や三菱東京UFJなどの金融法人が上位を占めています。
筆頭株主の日生はすでに11月の時点で大量に売却していて、
3月末に8.26%だった持株比率を、いまは5.11%にまで落としています。
損失規模までは公表されていませんが、おそらく億単位になっていることは間違いないのではないかと。
それこそ、巨額の損失…。
こういう事件が起きると、株への投資は何を信じていいのかわからなくなってしまいますね。
これだけ大きなウソが潜んでいるとなると、それは株式市場そのものが持つ本質的なリスクと考えるしかなく、
個人投資家としてはなす術がありません。株はギャンブルだと言われても仕方ないです。
このように、オリンパス社員をはじめ多くの投資家や市場参加者全体を欺き続けた罪は、僕は小さくないと思います。
オリンパスの上場維持か廃止かを決める東証の判断は、
それに対する答えということになるのでしょう…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
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