世界に通用する業界再編かどうかを見きわめる

先週末に新日鉄と住金が合併交渉を始めたことが発表されて、株式市場がにわかに活気づきました。
住金は売買高が3億近くまでに上り、4年ぶりの大商い。
新日鉄の売買高も3年ぶりの高水準で、両社と提携関係にある神戸製鋼なども含め、
いわゆる”鉄鋼株”は軒並み、年初来の高値を付けています。
鉄鋼株にけん引されて日経平均も前日比で100円以上値を上げました。
2週間ぶりに1万500円台を回復したわけですから、
この鉄鋼業界の大型再編は、投資家からは大変歓迎されたニュースだったわけです。
でも鉄鋼各社は、2008年のリーマン・ショック以来ずっと低迷していましたから
もしそれ以前に買って”塩漬け”状態の鉄鋼株を抱えていた人がいたとしたら、
絶好の利益確定(というよりも損切り)ポイントなのではないでしょうか?
なにしろ、新日鉄株は4日に前日比14%高の328円まで上がったとはいっても、
2007年の7月~8月にかけては900円台まで行ってたわけです。
住金にしても先週末の高値は236円。でも2007年の半ばには一時700円台をつけていたんですね。
当時、両社の株を高値で買った人にとっては、
今回の急騰でようやく買った時の株価の3割から4割を回復できたかどうかという攻防ですから、
まあ急騰と言われても、慰めにもならないですかね。
日本の鉄鋼業界の今後には期待を持ちたいところですが、さしあたり今回起きたことというのは、
株価を見る限りでは、ずっと忘れたことにしていた塩漬けにやっと”食べ頃”がきたかなと気づかせてくれた、
という意味合いで受け止めておきましょうか。
ところで新日鉄と住金の合併が実現した暁には
粗鋼生産では世界2位に躍り出るビッグカンパニーになるとのことですが、
ダントツの1位に君臨するのはルクセンブルグのアルセロール・ミタル。
この会社は2001年にヨーロッパの大手3社が大合併してできたアルセロールを、
さらに2006年にインドのミタル・スチールが買収してできた巨大企業です。
その後、新日鉄が買収される可能性もささやかれていましたが、
新日鉄の必死の買収防衛策が功を奏したこともあり、なんとかそれは免れたという経緯もあったそうです。
そのあたりはNHKスペシャルでも放映されましたので、今回の再編劇を機に続編が待たれるところですね。
アルセロール・ミタルの会長兼最高経営責任者(CEO)であるインド人のラクシュミ・ミタル氏は
投資ファンドなどと協力しながら各国の鉄鋼メーカーを次々と買収して財をなした「鉄鋼王」といわれる人物。
ベッドルームが12室あるロンドンの大邸宅には執事が控え、壁にはピカソの絵がかかり、
娘の結婚式をフランスで5日間かけて行い、総費用は5500万ドルという話が有名ということですから
とんでもない大富豪ですね。
そしてCFO(最高財務責任者)には息子である31歳のアディテヤ・ミタル氏を据え、
まさに世界のビジネス界で最強の親子とうたわれる存在。
そのラクシュミ・ミタル氏は、去年の10月に世界鉄鋼協会の年次総会が東京で行われた際に来日していて、
ロイターの取材に対して、こう答えたそうです。
「鉄鋼業界の統合はほぼ終わった。中国を除いて、統合の余地はあまり残されてない」。
つまり日本の鉄鋼メーカーの買収には関心はない、
日本の企業は眼中にないということを言ってるようにも聞こえます。
日本の鉄鋼業界にもここらで奮起してほしいものですが…。
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