“いい人”にならない

ユーロ建ての運用といえば、以前にもここで触れたことのある国内最大の投資信託、
グローバル・ソブリン・オープン(通称グロソブ)というのがありました。
総資産額がピーク時の2008年8月には5兆7685億円を記録したことで、
業界で”お化けファンド”と呼ばれていた投資信託です。
何度も言うようですが、”兆円”という単位が出てきたら、
1万円の札束を積み重ねた厚さを思い浮かべてみましょう。
1億円で、厚さ1メートルの札束です。
1兆円は、その1万倍。つまり1万円札を積み重ねていって、その札束の”厚さ”が1万メートル。
1万円札でできた柱がすくすくと伸びて、地上から10kmの高さまで届いたイメージですね。
高さ10kmは、だいたい国内線の旅客機が飛ぶ高度。成層圏です。
だから”グロソブ”は、絶頂期にはその高さ10kmの1万円札の柱がまるまる5本分と、
6本目もあともう少しでヒマラヤ山脈の高さに届きそうなところまで、集まったお金です。
たしかに”お化け”と呼ばれるのもわかります。
それで、ここからは僕の想像ですが、相当な数の営業マンがお人好しの老夫婦をつかまえて、
まあ難しいことは抜きにして何しろいちばん規模の大きいファンドだから安心、みたいなことを言って、
大切に貯めてきたお金を、リスクの説明もロクにせずに”グロソブ”に集めていたのではないかと想像してしまうのです。
その”お化けファンド”の純資産総額が、先週、ついに2兆円の大台を割りました。
下表は10月末までのデータですが、11月24日時点だと、約1兆9195億円。
                                                 (”投信資料館より)
年初にチェックしたときを振り返ってみますと、
去年の12月末時点では約2兆8千億円あったのが、いまだに1位を保っているとはいえ、
1年もしないうちに約8千億円も減ってしまったというわけです。
基準価額の推移を見ると、純資産総額とほぼ連動して下落しているのが良くわかります。
5年前には8000円台だったものが、今は4700円台にまで落ち込んでいるんですね。
当時こぞってこれを買った人たちの心中を思うと、お気の毒としか言いようがありません。
                                       (国際投信投資顧問の資料より)
投資を通じて知り合った知人で、ちょっと前まで通信系インフラの営業をやっていた人から、
最近、面白い話を聞きました。
通信系インフラというのは、最大手がやっている光ケーブルや各地域にあるケーブルテレビなどの通信設備を
個人宅でも利用できるように各社で設置を進めていっているわけですが、
彼らの間では、営業に行くことを”いい人探し”に行く、というふうに言われているのだそうです。
皆さんのお宅にもそういう営業の電話がかかってきたことはありませんか?
彼ら営業の多くはその業界のプロで、数ヶ月や数年単位で派遣業者や地域を変えて業界内を渡り歩き、
フルコミッションで成果報酬を稼ぐハンターのような人たちです。
夏前までは地デジの営業をしていた人が先月からは隣の街でケーブルテレビの営業になり、
年明けからはまた別の街の個人宅を回って光通信を勧める…。
そういう労働マーケットが存在するのですね。
特に地デジの特需のときは月収150万円もザラだったとか(僕らのように特別の資格を持たない者にとっては羨望の世界です)。
また電波障害の地域などは、月々の通信費が多少高くなっても快適な通信には代えられないとのトークで受注が取れるし、
震災以降は「節電」という大義名分ができたので、最大手の名前を出せば、”いい人”に当たれば
少しくらい費用が高くついても「お願い」すれば導入してくれるのだそうです。
もちろん通信インフラのおかげで僕らの生活は格段に便利になったし、
僕も毎日こうしてインターネットには大変お世話になっているので
この環境が拡大していくこと自体はすばらしいことだとは思うのですが、
彼ら営業の大きな稼ぎ口となるのは、パソコンなど使ったこともない、
これから使う予定もないお人好しの老夫婦の世帯だったりするわけで、
それこそ”いい人探し”のうってつけのターゲットです。
それで必要もない出費を毎月重ねることになるとしたら、それはお気の毒な話だし、
僕なんかはそのお金をもっと有効に生かす方法があるのではないですか?と言いたくなります。
投資もそうですが、いまは余裕があるからといって”いい人”になると、
後々、泣きを見ることにもなりかねません。
大切な資産がかかっているときに、”いい人”になるのは禁物ですね…。
※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
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