想像力

以前ここでご紹介した穀物ファンドのファンドマネージャーTさんが
先日、本を出しました。
『2015年の食糧危機(フードクライシス)』齋藤利夫著、東洋経済新報社(6月21日発行)
著者はTさんではなく、Tさんが経営するヘッジファンド会社の方ですが、
Tさんはこの本の原稿の何割かを執筆したほか、
本の企画立案から出版社への企画持ち込みと発刊の交渉、
その後も編集者と構成について話し合ったりと、
いわば全体のコーディネーター的な役割も担いました。
ひとことで言うと、Tさんがプロデュースした本とでもいいましょうか。
なるほど、本の副題には「ヘッジファンドマネージャーが説く次なる大難」とあります。
タイトルからも分かるとおり、もし経済が今の状況を続けたとしたら、
数年後の日本に食糧危機がきてもおかしくないと警鐘を鳴らす内容の本です。
本に巻かれたオビでは、こんなフレーズで訴えています。
  「牛丼1杯が1000円になる日が来る!」
この飽食の時代に、ただ食糧危機がくると言われただけではなかなか現実味が沸きませんが、
牛丼が1000円、といわれると、一瞬、え!?と目を引かれてしまいます。
しかもそれを言っているのは、経済評論家や学者ではなく、
世界中の穀物取引と日々向き合っている、ヘッジファンドマネージャー。
牛丼が1000円になる根拠をごくごくかいつまんで言いますと、
それは大きく二つあるのだそうで、
ひとつは世界の穀物価格の上昇、もうひとつは今の行き過ぎた円高だとのこと。
まず穀物価格については、その道のプロの視点からの警告ですから、
とりあえず僕らは耳を傾けておいて損はないのではないでしょうか。
  ①今世紀に入って、穀物相場が大きく変わった
  (穀物にも限りがあることに、世界が気が付いた)
           ↓
  ②穀物の価格は歴史的に、アメリカの戦略の影響を強く受けてきた
           ↓
  ③今後の世界の穀物価格には中国の存在が脅威となっている
           ↓
  ④こうした世界情勢を踏まえると、穀物相場は近年、暴騰する可能性がある
という流れで、国内でも食料価格全体が近々、急上昇しかねない、
具体的には、世界の穀物価格を決めるシカゴ市場の国際価格が
4倍にまで跳ね上がる可能性があるのだそうです。
以前ご紹介したのは、ここの②の部分、アメリカの穀物戦略のところについてでした。
アメリカが国を挙げてトウモロコシを生産してきたことが、
日本人の食生活にも大きな影響を与えてきたという事実。
スーパーに並ぶ食品の、実に9割以上にトウモロコシが使われているという、
ちょっとびっくりな内容でした。
今回の本ではさらに、食生活だけでなく、
新時代のエネルギーとして期待されているバイオエタノール戦略の裏にも、実は
アメリカによるトウモロコシ政策が大きく影を落としているという、
これもまた興味深い話も盛り込まれています。
そしてもうひとつ、個人投資家からいちばん関心が集まるのは、
今の円高をどう見ているかという点ではないかと思いますが、
この本の考えは、「かつてないほどの円バブル」という見方。
つまり円は買われすぎであると。
  「皆が高くなると信じ込み、皆が買うから実際に高くなる、だから自分も買う、
  ということが繰り返されているのです」
40年近くも続いているこの巨大バブルが破裂すると、
円はドルに対して1/3~
1/ 4にまでなる恐れがあると、著者は予測しています。
そうなるとつまり、1ドル240円~320円…。
これらをまとめると、牛丼1杯の値段は結局、1000円どころでは済まなくなります。
穀物価格が4倍、円安が1/3~1/4ですから、
  (穀物相場の上昇)×(来るべき円安)
の掛け算で、4×3なら12倍、4×4だと16倍…。
牛丼が280円とすると、12倍として3360円、16倍になると4480円にまでなってしまいます。
吉野家で牛丼を頼んで5000円札を払う場面、
みなさん想像できますでしょうか…?
想像力ってけっこう馬鹿にできないと僕は思ってるのですけど、
長くなりそうなのでそれは次回また…。
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