“実業”をまっとうしてこそ

映画『ウォール・ストリート』(原題”Wall Street: Money Never Sleeps”)を観てきました。
僕はふだんあまり映画を見ないほうなので外国人の俳優の顔がぜんぶ同じに見えてしまって困るのですが、
主演のマイケル・ダグラスだけは僕の中で『ブラック・レイン』のときの印象が強烈だったせいもあったのか、
この映画では他の役者と見間違えることもなく最後まで楽しめました(笑)まあそんなことはいいとして。
ストーリーは、かつてウォール街に君臨した男、ゴードン・ゲッコー(マイケル・ダグラス)が
インサイダー取引で負った罪の刑期を終えて刑務所を出るシーンから始まり、
TVでそのニュースが流れているのを彼の娘ウィニー(キャリー・マリガン)がたまたま目にする場面へと引き継がれていきます。
ウィニーの交際相手は野心家の若手トレーダー、ジェイコブ(シャイア・ラブーフ)で、
彼はウォール街で勤めていた投資銀行が経営破たんして恩師が自殺へと追いやられたりと辛酸をなめるのですが、
一連の出来事には裏で操る黒幕が存在することを知ると、その黒幕への復讐を画策、
金融界に復活しつつある(しかも恋人の父親でもある)ゴードンに接近して取引を持ちかける…。
この3人の人間ドラマを基調にしつつ、リーマン・ショックを思わせる激動で揺れる金融界のなかで
大手銀行やらFRBやらが繰り広げる駆け引きと裏切りと復讐の物語がテンポよく展開していきます。
その中でいろいろ考えさせられる場面があったり、台詞のなかにもなかなか味のあるフレーズが出てきたりと、
退屈するヒマもない充実した2時間でした。
23年前に公開された『ウォール街』(原題”Wall Street”)の続編ということで、僕はそちらのほうはいまだに観ていないのですが
受験生だった当時、雑誌「ぴあ」(懐かしい)なんかで大きく取り上げられていたのはよく覚えています。
実はこの1作目が実際のウォール街に与えた影響は大きかったらしくて、
そこで魅力的に描かれていた華やかな世界に憧れた人たちがどおっと金融界に押し寄せて
それがちょうどいまのウォール街でバリバリ現役で活躍している人たちなのだそうです。
ただ監督のオリバー・ストーンは前作で”ゴードン側の人間”ばかり増やしてしまった事を遺憾に感じているようで、
なるほど本作では金融界の豪華絢爛なパーティーの場面もあるにはあるのですが、
そういわれると確かに映像としてもちょっと距離を置いた感じに見えました。
全体の印象としては、金融の世界のスリリングな場面よりもどちらかというと家族愛だとか人間味といったあたりのほうが強く残るのはそういうことだったのか、と妙に納得してしまったわけです。
オリバー・ストーン監督は最近のインタビューでも金融機関の社会貢献とか経済活動の機能とかについて触れていて、
いまのウォール街は経済活動の本来の機能を失っていると言ったり、お金は麻薬だというような言い方をしています。
僕がとくに先生方にもぜひと思ったところは、たしかスタッフロールに入る直前あたりだったと思いますが、
ジェイコブの母シルヴィア(スーザン・サランドン)が最後に病院で看護師として働いているシーンがちょっとだけ流れるところです。
元看護師のシルヴィアは、不動産バブルでひと儲けして以来、不動産業にのめり込んでしまい、
ところどころで登場してはそのたびに「あ~もう大変!また値が下がっちゃったわよ~」みたいな感じで
慌ただしく息子のジェイコブに何度も金の無心を求めてきます。
「でもこれがあたしの仕事なんだから!」とか言いながら、なかなか不動産投資を止めようとしないシルヴィア。
演技としてはとてもいい味を出しているのですが、まあ困った母親です。
でもいろいろなドラマを経て、元の看護師に戻って患者と接して幸せそうに仕事をしている場面が流れるんです。
実業と虚業…。
映画の中ではそういう言葉こそ出てきませんが、
金融や不動産といったマネーゲームの対極に位置づけるものとして医療を持ってくるあたりに、
オリバー・ストーン監督がこの映画に込めたメッセージの一端が見られたように思います。
あと、全体を通して流れるデビッド・バーンの音楽とその飄々とした声がなんとも心地よくて、
映画をちょっとまた別の、何か超越した視点から眺めているような不思議な気持ちにさせてくれます。
それから、ジェイコブの婚約者ウィニー役を演じているキャリー・マリガンは大竹しのぶにそっくりというのが
もっぱらの評判みたいです…。


※当ブログの目的は、投資に関する話題の提供であり、投資勧誘ではありません。
また、記載した情報はweb上で公開されているものですが、実際に投資される際には
あらためてご自身でご確認ください。
投資はあくまでもご自身の責任と判断でされるようお願い致します。